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何かできること
「あれは……松尾君?」
首を傾げ覗いて見る。和希が拓斗の机に何かを書いている。周りを見渡しながら誰もいないと確認して書き終わるとそそくさと出て行こうとする。一瞬何気ない顔でそのまま教室に入ればいいかと思ったが、何か見られたくない素振りを見せていたので入れず隠れた。美郷に気づかず通り過ぎる和希。暫く隠れた後、誰もいなくなった教室で拓斗の席に駆け寄った。机の上を見てみる。
──頑張れよ!──
と殴り書きがされていた。
「あぁ、松尾君も心配してるんだ。それにきっと私と同じでどうしていいか分からないだ」
私たちは無力だと美郷は思った。出来ることなんてこれっぽちもないとしか思えない。きっと今の心境を分かった振りをしてもそれを共有することは出来ない。烏滸がましい。
「今、出来ること……」
美郷は鉛筆を取り出した。
「些細なことだけど、これで少しでも力になれれば」
美郷は机に丁寧に書いた。
「思いが伝わればいいな」
──頑張ってね──
美郷も真似て拓斗の机にメッセージを残した。
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