月と太陽は交わらない(後編)

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月と太陽は交わらない(後編)

「葉月、俺とセックスしてくれるなんて嬉しい!! 早く早く俺と結婚もしような、今は葉月の父親を説得しているところだ」 「そうなのか、父さんは何て言ってる」 「まだ良い返事が聞けてないが、そのうちに説得してみせる!!」 「そっか、また何かあったら教えてくれ」 「うん、分かった。葉月には何でも教える。それじゃ、セックスしよう」 「僕はあまりセックスが好きじゃない、だから吐いてしまう。二、三回にしてくれ」 「葉月がそう望むならそうする、二、三回でも俺とセックスしてくれるなんて嬉しい」 「それじゃ、長く時間をかけないで頼む」  僕は吐き気と戦いながら陽司とセックスをした、あのΩの子のことも抱いた。陽司は本当に二回のセックスで終わらせてくれた、おかげで僕は腹の中身を吐き散らかさないで済んだ。それから陽司は変わっていった、僕が陽司に優しくすればするほど、陽司は優しくなってセックスより話をする時間が増えた。陽司はこの似鳥家でも馬鹿にされていた、陽司の親は彼のことに無関心だった。それよりも本妻が生んだ妹が大事にされていて、本当に陽司には仕事を覚えることしか期待されてなかった。両親の愛情が貰えないから陽司は愛情に飢えていた、僕が少し優しくすると陽司はもっと優しくなった。 「葉月は何が好き、俺のお嫁さん以外に何になりたい?」 「まだ何になりたいかは決めていない、できれば大学で何か資格をとって、誰かの役に立つ仕事に就きたい」 「俺は一生、妹の代わりに仕事をしなきゃならない。でも葉月といられるなら、幸せだからいい」 「家を出て何かになりたいとか思わないのか? 陽司」 「うちの両親は俺に関心がないけど仕事の腕だけは認めている、きっと両親が便利な俺を手放してくれない」 「でも妹さんが結婚したらどうするんだ、その旦那さんがここの跡を継ぐだろう?」 「その時は俺は捨てられるかも、でもそうなっても一人で暮らせるように、きちんとそれなりに給料は貰っている。葉月くらい養えるから俺を捨てないで、俺の傍にいて早く結婚したい」 「本当に大丈夫なのか、両親から捨てられた時に生きていけるのか?」  僕からの問いかけに陽司は分からないと寂しそうに笑って答えた、僕は思わずそんな陽司を両手で抱きしめてやった。するとセックスしたいのと聞かれたから、お前を抱きしめたいだけだと僕は答えた。そうして僕と陽司のセックスする回数はどんどん減っていった、陽司は俺を抱くよりも僕から抱きしめて貰うことを喜ぶようになった。その代わりに自慰を陽司はよくしていた、僕は陽司から離れられなかったから、隣の部屋とかでその時は過ごした。だが陽司が僕を欲しがっているのは分かった、だから二回くらいの短いセックスなら僕から誘ってするようになった。 「ストックホルム症候群だ」  僕は異常な状況におかれているから頭では自分の状態が分かっていた、僕を誘拐してきた陽司に僕は共感や好意を抱いているのだ。それならば陽司と離れて僕は過ごす時間が必要だった、陽司から離れて自由になってみてそれでも共感や好意を抱けるのなら、それは僕の本当の感情に違いなかった。それで僕はここから出て行くことを決めた、陽司と一緒に似鳥家の中を歩きながら、逃げ出すためのルートを覚えた。そしていつもどおりに僕から誘ってセックスして、陽司を抱きしめてあげて彼が深く眠ってしまったら、僕はなんとか似鳥家から逃げ出した。 「警察ですか、監禁されてたんです。なんとか逃げ出してきました、僕を保護してください!!」    そうして僕は念のためにかなり離れた交番に駆け込んだ、似鳥家の支配している地域から外れたところだった。僕はすぐに警察に保護されて詳しい調書をとられることになった、そして僕は古島の自分の家に帰って来られた。警察に保護されて戻ってきた僕をみて父さんは目をそらした、僕に何が起きたか知っていて父さんは、三十億惜しさに何もしてくれなかった。陽司は逮捕されることになった、実家である似鳥家からも見捨てられた。僕は恨まれてるだろうなと思いながら、逮捕された陽司に会うことはなかった。僕と陽司が会うことはないはずだったのだが、警察署にまた調書の為にいったら陽司に会った、陽司は泣き喚いて暴れて僕を抱きしめようとした。 「嫌だ!! 葉月!! 俺を見捨てないで!? 嫌だ、嫌だ、嫌だ!! 葉月何でもするから、俺の傍に戻ってきて!! 俺とのことを無かったことにしないで!?」 「――――ッ!?」  僕は陽司に何も言えなかった、まだ僕はストックホルム症候群にかかっている、その可能性があったからだ。陽司は泣いて僕に捨てないでと訴えながら警察の人に連れていかれた、警察も困っていた似鳥家と言えばこの辺りでは大きな財閥だったからだ、その長男が誘拐をしていたからといって親である似鳥家の人々を罪に問えずにいた。また僕の両親が似鳥家に睨まれるのを恐れて捜査に非協力的だった、僕はこの瞬間に家に見捨てられたなと思った。そしてもう両親のことを信じるのを止めた、僕はバイトを始めながら大学受験の勉強をした。最後の義理なのか大学での学費だけは両親が通帳に入れて僕に渡してくれた、僕は自由になって親友の健一とも再会した。 「誘拐されてたんだって、大丈夫か?」 「今はカウンセリングを受けてるところ、大丈夫かどうかはよく分からないや」 「そうか何が遭ったのかは聞かないよ、話したくも無いだろうし」 「さすが親友、僕の気持ちがよく分かるね」 「何の役にも立たない親友だけどな、話し相手くらいにはなれるからまた声をかけてくれ」 「それだけで十分だよ、僕は誘拐された少年A扱いだ」 「よく逃げ出してきたよ、凄く頑張ったんだな。葉月」 「ああ、頑張ったんだ。僕は凄く頑張ったんだよ、健一」  親友の健一はいろんな噂が流れているだろうに、僕には何も聞かないでそれよりも大学受験などの話をしてくれた。僕は日常に戻れたんだという実感がした、あの監禁されていた日々をすぐには忘れられないけれど、それでもカウンセリングも受けていて前に進んでいるという実感があった。僕が心配しているのは二人だった、一人は陽司とのセックスをする時に、オナホ扱いされていたΩの子のことだった。僕は酷い目に遭っていないことを祈っていた、もう一人は言うまでもなく陽司のことだった。僕は自分の本当の気持ちが分からなかったから、陽司にも何もしてやれることはなかった。だが、逆に陽司から僕に手紙がくるようになった。 『葉月愛してる、今も愛している。俺を見捨てないで』 『ごめん、ごめんなさい。本当に酷いことを俺はした』 『葉月、許して。お願いだから許して、見捨てないで』 『葉月に会えなくて寂しい、葉月の夢ばかり見てるよ』 『葉月、葉月、葉月、会えなくてもう気が狂いそうだ』 『何度だって謝るから、俺のことを許して捨てないで』 『無理やりに抱いて、ごめん、ごめん、ごめんなさい』 『葉月は元気にしてる? 俺は精神鑑定を受けている』 『葉月が本当に好き、逃げられたけど今でも愛してる』 『早く、早く、葉月に会いたい。会って謝りたいんだ』 『両親から捨てられた、でも葉月さえいればいいんだ』 『会いたい、会いたい、葉月に会ってキスをしたいよ』 『大好きな葉月、俺を許して受け入れてくれるのかな』 『許してくれなくても会いたい、殴られたっていいよ』 『葉月が好きだ、やっぱり大好きだ、今も愛している』  俺は陽司からの手紙をまだなるべく読まないことにした、ストックホルム症候群がまた治ったとは言えないからだ。カウンセラーもそうすることを薦めた、だからチラッっとしか陽司の手紙は読まなかった。でも何故か大切にとっておいた、破り捨てたりしないで大切にとっておいた。そうしているうちに僕は一人暮らしを始めて大学受験があって、僕は無事に大学に受かることができた。それは健一も同じで僕たちはお互いに喜び合った。そうして僕と健一はお祝いに酒を飲んで酔っ払って僕は帰宅した、そうしたらどうやって調べたのだろう、陽司が僕の新しい部屋の前に座り込んで寝ていた。 「陽司、おいっ陽司!!」 「ああ、葉月だ。会いたかった、凄く嬉しい。…………抱きしめてもいい?」 「とりあえず部屋には入れてやる、また強姦しやがったら今度は僕は死ぬからな」 「葉月が死ぬなんて駄目だ!? 絶対にそんなことはもうしないから、葉月。ごめん、俺はいくら謝っても足りないけどごめんなさい」 「土下座なんてして、それで許せると思うのか?」 「許して貰えないと思う、でも葉月に会いたかった。好きなのは本当なんだ、愛してるんだ」 「もういいからお前、結局どうなったのか、こっちに来て話して」 「うん、分かった」  そうして俺たちはテーブルを挟んで座って話をすることになった、陽司が起こした誘拐事件は似鳥家の圧力と抗議で不起訴になったそうだ。だから陽司は警察から解放されたが、警察に捕まるような息子はいらないと実家である似鳥家から勘当された、陽司は家の仕事を手伝っていた時の給料でホテル暮らしをしていた。そして試験日に俺の大学まできて、そうして俺の跡をつけて家を突き止めていた。でも今まで俺に嫌われるのが怖くてこれなかった、今日やっと勇気を出して僕の部屋の前で待つことにしたそうだった。正直に話した陽司に、僕も正直に現状を話した。 「陽司、僕はストックホルム症候群かもしれない。だから、陽司のことをどう思っているのか、僕の本当の気持ちが分からない」 「俺は偽物の気持ちでもいいよ、それも葉月の感情だろ。だから、どうか俺を捨てないで、なかったことにしないで、好きになってくれなくても無視はしないで……」 「ストックホルム症候群が治った時、僕は陽司を嫌っているかもしれないぞ」 「今度は好かれるように頑張る、仕事も見つけて生活を安定させて、葉月にふさわしい男になる」 「それでも好きになれないかもしれない、お前のことが大嫌いかもしれない」 「大嫌いならいいよ、それより下はないだろ。それなら、そこから好かれるように頑張る」 「俺のことを諦めてくれる気は?」 「葉月には悪いけどない、俺はずっと葉月が好きだった。今も大好き、逃げられても追いかける」  僕が何を言っても陽司に僕を諦める気はなかった、僕はため息を一つついてびくびくしている陽司を見た。その姿には僕を強姦した時のような激情はなかった、ただ穏やかに陽司は僕が好きで大好きで愛していた。僕は健一と飲んで少し酔っていた、だから陽司を試すようなことをした。座っている陽司に寄りかかってみた、陽司はビクンッと体をはねさせたが大人しくしていた。それから僕は陽司の頬にキスをしてみた、陽司の顔がみるみるうちに赤くなった。僕は思い切って陽司にキスもしてみた、口と口を合わせるだけの可愛いキスだった、それでも陽司は僕に何もしなかった。 「…………反省してるのは認める、でもな僕はやっぱり陽司。お前が許せない」 「いいよ、殴る? 何でもしていいよ、何をされたって俺は葉月が好きだ」 「それじゃあ、僕のものをしゃぶって、お尻の穴の方もいじってよ」 「え!?」 「お前が言ったんだろ、もう後ろの刺激無しじゃいけないって、責任をとって俺をいかせろ」 「葉月、すぐにそうする。ズボン、脱がせてもいい? 俺が両方ちゃんとしていかせるから」 「ああ、いいぞ。自慰も久しぶりなんだ、ちゃんといかせてくれ」 「どっ、努力する!! 葉月、大好き!!」  そうして陽司は僕のものを恐る恐る口にいれてしゃぶった、ローションをつけた指で僕のお尻の穴もいじりはじめた。僕は陽司に何故か嫌悪感は感じなかった、前にセックスをしていた時のような吐き気も無かった。久しぶりにお尻の方をいじられると凄く気持ちが良くて、僕の指じゃ届かないような奥まで陽司は愛撫してくれた。僕のものへのフェラも凄く丁寧で気持ちが良いものだった。 「ああっ!! やぁん!! うん、そこいじって。ああっ!! いっちゃう!!」    ほどなくして僕はいった、ここ最近では最高の快感だった。だから陽司にもう一回とおねだりした、陽司は僕のものを舐めながら興奮していて、陽司自身のズボンの前を膨らませていた。そうして、そのままもう一回僕はいかせてもらった。一応は陽司がしてくれたことなので、僕はお礼を言っておいた。そうしたら、今度は陽司からおねだりされた。 「ありがと、陽司。気持ち良かった、でも陽司のそれは自分で処理してくれ」 「ああ、葉月の役に立てたなら嬉しい!! 葉月、俺が自慰していくところ見ていて欲しい」 「見られると興奮するの? 変態」 「葉月に見られると興奮する、俺は変態でいい」 「いいよ、見ていてあげる。早く済ませて、ティッシュはそこだよ」 「葉月、葉月、さっきの精液も美味しかった、口の中が葉月のものでいっぱいで気持ち良かった」 「恥ずかしいこと言わないで、さっさと自慰を済ませなよ」 「ああ、分かった」  僕が見ているとそれほど経たずに陽司はいってしまった、しかも一回では終わらずこいつ七回も自慰をしてみせた。完全に僕の目線に興奮していて、ちょっと足でいじってやったらすぐにいった、そして陽司は僕の足を汚した精液をティッシュで丁寧に拭いた。それから陽司は僕の家に住むことになった、僕は気持ち良いオナニーをしてくれるから、それだけの理由で陽司と一緒に住むことにした。1LDKで狭かったが、陽司は大喜びしていた。陽司は毎日が幸せそうで仕事をみつけて働きだした、一方僕は大学に通い始めて親友の健一に陽司のことも言っておいた。健一からは心配されたが、今の陽司は僕にとって危険とは思えなかった。 「もう陽司、また当たってるんだけど」 「葉月のも固くなってる、俺が気持ちよくしようか」  僕たちは一緒のベッドで寝起きしていた、だから相手の体のこともすぐに分かった。でももう僕は監禁されてるんじゃない、まだストックホルム症候群かもしれないけど、一応は僕の意志で陽司と一緒にいるんだ。陽司はまたいやらしく僕のものを舐めてお尻の穴をいじって、僕のオナニーを気持ち良くしてくれた、その代わりに僕は陽司が自慰しているところを見ていてあげた。相変わらず何度も、何度も陽司は自慰でいっていた。歪な日常なようだが、僕も陽司もそれで満足していた。そうして、カウンセリングの先生が僕にもう克服されたようですねと言った、僕はそれが嬉しく走って帰って僕を待っていた陽司に抱き着いた。 「陽司、僕の病気は治った。だから陽司、今度は間違わないで。さぁ僕とどうしたい?」 「葉月が好きだ、愛してる。俺は葉月と一緒にいたい、葉月を傷つけないで一緒にいたい」
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