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「まあ、引っ越すのが大変なのは確かですけど、少しくらい頑張ってもらわないと。乗り越えれば新しい環境が手に入るわけですからね」
まるで友達のことのように言った男の子だけど、拝殿のほうから巫女さんに呼ばれて急に慌てだした。
「ああ、あっちの掃除も頼まれてたんだった」
「忙しいんですね」
「まあ。あの、話し違いますけどお姉さんって近くの一条システム社の社員さんですよね?」
「え?どうして……」
職場を言い当てられて眉根を寄せたけど。彼は申し訳なさそうに私の胸元を指さしてくる。
「社員証、下げっぱなしだったから」
「……あ」
しまった。ネックストラップの社員証、つけたままで歩いてたんだ。自己紹介しながら歩いていたものだと、途端に顔が熱くなった。
「ただのパートです。社員証は一応全員支給されてるから……」
「へえ。僕、実は就活でこっちに出てきてるんですよ。大学の友達も何人か近くのホテルに泊まってて」
就活?大学?高校生と思っていた男の子は大学生だった。
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