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新年度
「はい注目っ!この部署に配属された子を紹介するわよ~!」
所属している部署の長、早乙女部長から声がかかり、続いて長身の男の子が姿勢よく頭をさげる。
「上川琉人です。どうぞよろしくお願いします」
やけに落ち着き払って挨拶した上川さんに、私達は揃って拍手する。私も新卒で順調に働いていたら3年目だったなぁ。最初は夢と希望でいっぱいだったっけ。
「じゃあ、上川くんの教育係は大林くんね」
「俺ですか?」
「しっかりフォローしてあげてね。将来は開発部を希望してる、期待の新人なんだからっ」
「はあ。了解っす」
大林さんは不満げに頷いた。開発部には優秀な人材がたくさん集まっている。だから、そこを希望する後輩に嫉妬心を漂わせているのは一目瞭然だった。
部長が行ってしまうなり大きなため息をついた大林さんは、分厚いファイルを投げるように上川さんへ渡す。
「これ、業務マニュアルな」
「ありがとうございます」
「開発希望なんてさぞかしエリートなんだよな?マニュアル一読すれば即戦力だろ」
「いえ、そんなことは……」
いきなりの嫌味に戸惑い顔になっている上川さんだけど、大林さんはその表情を見ようともしない。
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