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「へえ?広報部の新卒くん?上川くんていうのね?覚えたわ」
「成美ちゃんが面倒みてるの?だったら私達もちゃんとサポートしないとねっ」
大林さんが相変わらず上川さんを放置しているので、私はちょこちょこ上川さんの仕事を手伝いつつ、合間を見つけてはあちこちの部署のパートさん達へ彼を紹介してまわった。
部署は違えどパートの雑務や庶務は共通しており、それによって顔見知りになることも多い。だからパート同士は横の繋がりが結構強いのだ。
「田山さん、ありがとうございます。こんなにたくさんの人達と会える機会なんてなかったので、挨拶させていただけて嬉しいですよ」
挨拶まわりなんて面倒がるかな?と思ったけど。上川さんは終始笑っていたし彼女たちと雑談して名前も憶えていってくれた。
「でも。どうしてこんなにパートさん達を紹介していただけるんです?」
ああ、それはもちろん……。
「なにかあった時に、助けてもらうためです」
正社員は定期的に社内異動があるから。その部署の業務を理解して庶務全般を担当してるのはパートさんのほうなのだ。
「困ったことがあったら皆さんに声をかけてみてください。もう顔見知りになったので、きっとなんでも教えてくださいます」
「ありがとうございます。そうしてみます」
上川さんが素直に頷いてくれたので、密かに胸を撫で下ろした。連れまわして悪かったな、という罪悪感が払拭された。
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