1- 始まりの日

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「さぁ、人間として転生をしましょう。」 イーネスは、両手を広げる。 「俺、鳥のままでいいよ。衣食住は大変そうだけどさ。」 「え。人間ですよ?しかも、健康体で転生できるんですよ?」 「うん。それでも鳥でいたい。」 イーネスは、不思議そうな顔をしている。 「国を治める王様とか、魔物を討伐する勇者とか。選べますよ?」 「それは、面倒くさそうだから嫌だ。」 勇人は、首を横に振る。 「大陸最強と呼ばれる騎士はどうですか?」 「怪我をして死にそうじゃん。嫌だよ。」 勇人は、再び首を横に振る。 「それなら、魔法のある世界なので、魔術師はどうですか?モンスター相手にバシバシと魔法で戦えますよ。」 「魔法があるんだ。」 勇人は、少しだけ興味を示した。 「いや、やっぱりダメだ。怪我をして死ぬパターンだよ。」 またも、勇人は首を横に振った。 イーネスは、少し表情を曇らせる。 「ふむ。それなら何ならいいんですか?」 「鳥!」 「却下です。」 「なんでだよ。鳥がいいって言ってんのに・・・。」 勇人は、ブツブツとつぶやきながら、その場で腰を下ろした。 「わかりました。今ならチート能力とか、色々な特典をつけることが出来ます!どうですか?」 「いらない。そういうのには興味がない。」 「どんな人間になら、なりたいと思えますか?」 イーネスは、頬を膨らませる。 「人間以外の選択肢はないの?」 「ありません。人間でお願いします!ご希望があれば合わせます。」 「イーネスは女神なんでしょ?融通とか効かせてよ。」 勇人は、両手を後ろについて、イーネスを見上げる。 「できません。私たち女神は、勇人さんの世界でいう公務員のようなもの。上からの通達には逆らえないのです。」 「じゃぁ、その上の人と直接話をしよう。どこにいるの?」 勇人は、ゆっくりと立ち上がる。 「私たちの上司は、創造神バスティンと言います。呼ぶとなると、私のお給料が減給になるか、ボーナス査定が悪くなるのです。ぐすん。」 イーネスは、涙を拭くようなしぐさをする。 「流石に、それは可哀想だな。」 「わかっていただけますか?」 イーネスは、両手を胸の前で組み、表情を明るくさせた。 「人間で転生するよ。仕方がない。」 「ありがとうございます!どういう人間になりますか?」 「んー。そもそも転生先ってどういう世界なの?」 「説明しますね。」
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