大いなる輪 ダリアを飾れ

2/2
前へ
/2ページ
次へ
その瞬間、なにかコンクリートの硬さとはまた違う、なにかが当たった。 でもわたしは脱力と絶望で気を失いかけてしまう。 「んっ・・・」 私は少しだけ気を取り戻し、いい感じに鼻をやわらかく包むムスクの香りで 目を覚ますと、端正できれいなかっこいい顔立ちのひとがわたしの体を 包んでいた。 だ・・・れ・・・? 「・・・っ起きた。大丈夫か?」 わたしのことを心配してくれた声はきれいで程よく低かった。 誰かが自分を心配してくれる声なんて久しぶりに聞いたかもしれない。 ほわほわしていた私だが、急に現実に引き戻される。 「あっ、重いですよねすっ…すみません。ありがとうございました。」 礼を言い足早に去ろうとすると、軽く腕を捕まれる。 「そんなことはない。むしろ体重がちゃんとあるか心配になるレベルだ。」 「はい・・・」 早く離してほしいのにその男の人は一向に手を緩めない。 「・・・見た感じ頭を強く打っているし、手は打撲、足は重めの捻挫。 他にもまだあるかもしれない。とにかくいますぐ医者の友人を呼ぶ。」 と言われた。 「やめて!嫌です、離して…。」 「はっ?こんなに怪我してるんだぞ!?」 「それでも…いや…です!!やめて…くだ、さい!」 「なんで・・・なんだ・・・?」 「お願いです…お願い…っ」 すでに私のまぶたには涙が溢れていた。そんな私を見た彼は 「そこまで言うなら…わかった。もうこれ以上は言わない。 帰ったら痛む場所をを冷やしてくれ。病院は行ったほうがいい。  なんか役に立てることがあったらいつでも言ってくれ。 おせっかいを焼いてすまない。」 と言い、名刺だけ渡してくれた。わたしは渋々、それを受け取った。 そして引き下がってくれた。 「では、ありがとうございました。」 お礼だけ言って足早に去る私は、他人から見たらただの変人でしかないだろう。 しかし実は私、軽い男性恐怖症を持っている。その原因はわからない。 男性と事務的な話とかする分には大丈夫なのだが、少しでもプライベートに踏み込んだことになってしまうとどうしても恐怖を感じ全身がピリつくように 凍ってしまう。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加