しょうせつ、しょうせつ。

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 ***  彼から送られてきたその“名無しの怪談”。  先輩が言った通り、実際なかなか面白いものだったのだ。単純な復讐譚かと思いきやそんなこともなくて――おっと、ネタバレをしたら勿体ない。  全文、テキストファイルに直してアップロードしたからみんな確認してみてほしい。興味がある人はぜひ読んで、このブログの質問箱にでも感想を投げて欲しいと思う。アドレスはこれだ→【htpmpm//●●●_●●●●●●●】。  さて、先輩からそんな話を聞いた翌日の日曜日ことだ。  自宅アパートにて、僕はテレビを見ながら朝ごはんを食べていた。先輩に感想をメールで送ろうとして、あれ?と首を傾げる。なんと、宛先不明で返ってきてしまったのだ。先輩から小説を送って貰ったメアドにそのまま返信しているというのに。  何かトラブルでもあったのだろうか。それですぐにアドレスを変えてしまったのだろうか。今彼が住んでいる住所も電話番号もわからない。せっかく再会できたのに連絡が取れなくなってしまうなんて、と僕は途方に暮れてしまった。 「ええ……どうしよう」  また先輩の方から訪れてくれるだろうか。がっくりしながらニュースを見ていた時だ。 『次のニュースです。……一昨日、北海道の河川敷で発見された男性の遺体の身元が判明しました。一年ほど前から行方不明になっていたという、××銀行会社員の、高橋基樹(たかはしもとき)さん、二十六歳で……』 「え」  僕はぽかん、と口を開けてしまった。  たかはしもとき。  高橋先輩の名前だ。そこまで珍しい名前ではないが、××銀行会社員であるのも、年齢もあっている。  何より、テレビで流れた写真がどう見ても高橋先輩の顔だった。その先輩が、北海道で死体となって発見された? ――そんなばかな。  おかしい。だって彼は、昨日僕の家に来たばかりである。間違いない。だって僕は彼から確かに、あの小説を送って貰っている。 ――ひょっとして。昨日会った先輩は、幽霊?  僕の身に起きた件についての話は、ここまで。  この後調べてみたところ、うちの大学の文芸部出身の先輩が一人、高橋先輩よりも前に亡くなってることがわかった。その先輩は、某県の沼に沈んでいるところを発見されたという。死因は不明。その人が、高橋先輩にあの小説を見せた人かどうかはわからない。  だから、ここから先は僕の推測だ。  あの小説はひょっとしたら、あれそのものが怪異だったのではないか。  ネットなどを介して、突然人前に現れる。そして誰かに自分を読ませて、読んだ人間はそれを別の誰かに読ませたくてたまらなくなるんじゃないだろうか。もしくは、その人物の元に再度現れて読ませるように仕向けるんじゃないのか。  そして他人に読ませたところで、その人間は役目を終えて――死ぬ。先輩が予想した通り、あの小説に登場するおばあさんが呪ってるのか憑りついているのかはわからないけれど。  ところでさ。  このブログを読んでくれたみんな。フォロワーも多いし、結構この記事の閲覧数も伸びていると思うんだけどさ。  さっきのアドレスから、何人が小説をDLして読んでくれたのかな?  君達が僕と同じように役目を果たしてくれたら、すっごく嬉しいなあ。
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