4月9日「雨のち、さくら」

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4月9日「雨のち、さくら」

黒いタイヤに桜が絡まり、ピンクの斑点が浮かび上がる。 昨日の雨で桜はかなり散っていた。 雨のち、さくら。だ。 久しぶりに乗った自転車はほんの少し空気が抜けて段差を降りる度、登る度に尻にかなりの振動を伝えた。 信号に引っかかる度、左手に光る時計をチラチラと確認する。 授業開始まであと5分。 間に合わないからといって立ち漕ぎをするほど勤勉ではない。 時計をチラチラと見るのは、間に合いたいからなのではなく、その反射になんとなく目がいくだけだった。 その日、4月9日が僕の久しぶりの登校日だった。 正確には4月8日に初日の授業があったのだが、前日に友人と朝まで飲んでいた結果、授業が始まり、教授が話している90分を、自宅のベットで惰眠に費やしていた。 前日、つまり4月7日のことはまるっきり覚えていない。 スマートフォンのアルバムに残るブレブレの写真と視点の定まらない動画。 動画の中に収まる声はどれも雄叫びに似たようなもので動物園なんかを連想させた。 つまり、それは「良い」飲み会ではなく、しかし、楽しい飲み会であったことを示唆していた。 二日酔いの体を無理に起こし、スマホに浮かび上がる時間を確認し、1つ大きなため息をついてから、先程と同じ体制に戻り瞳を閉じた。 そして、僕の初登校日は4月9日となったのだ。
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