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桜が積もった川は濁り、決して綺麗とは言えないものだった。
花見という文化を継承し、好む日本人でさえその川に趣を感じ取ることは難しいだろう。
ただ、川沿いに連なる桜の木はその身から放射線状に広がる枝に桜を付け、そこにはピンク色の桜が放つ魅惑に捕まり立ち止まり、写真を撮る人々が屯していた。
「ハングリーピッグ」は閉店していた。
ガラス扉越しに見える店内は業務スーパーの袋や大量の木材、それから2リットルの焼酎なんかで溢れかえっていた。
退廃した店内には開店時に使われていたであろう発券機が放置されており、そこには手書きで「大」「中」「小」と書かれている。
掠れている文字は何人もの指先で押された名誉の負傷であるような気がしてどこか輝いて見えた。
40分も歩いたものだから腹は減っている。
結局僕達はコンビニで100円のおにぎりを買い、それを食べた。
中から出てくる梅は濃く、赤く、僕はそれを一口で食べた。
口の中で酸っぱさが広がる。
時計を見るとまだ8:15分だった。
横浜の時間の流れは緩やかだ。
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