Crash!〜元魔王と元騎士の優雅なる?転生生活〜

2/52

1217人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「ユージーン。起きてください、ユージーン」 ーー不意に、私の耳に響いてくるとても優しい女性の声。 (私は……魔王の城で戦っている最中では無かったか……?) 私はぼんやりとした頭でそんなことを考えながら、ゆっくりと目を開ける。 すると、目の前には長い水色の髪をした、美しい女性が立っていた。 「よく頑張りましたね、ユージーン。よくぞ、レグムント帝国を守ってくれました。国の守護女神として、心からお礼を言います。ありがとう。貴方は立派に務めを果たしました」 私を心から労っているのが伝わる、とても優しい声音。 その声や言葉ーー何より『努めを果たした』という台詞から、私は今、自分が置かれている状況を理解した。 「ああ……私は、死んだのか……?」 ぽつりとそう呟く私。 女神は、私の言葉に申し訳なさそうに頷いた。 「国の守護女神でありながら、何もすることが出来ず……本当に済みません」 きっと、本当に申し訳がないと思っているのだろう。 女神の翡翠の瞳には、うっすらと涙が滲んでいた。 (真面目な女性(ひと)だ……) 私は、そんな女神にゆっくりと頭を振ってみせる。 そうして、微笑みながらこう告げた。 「大切な国や国民を守って死ねるなら、騎士として本望だ」 そうーーこれは、嘘偽りのない私の本音だ。 しかし、それでも申し訳なさそうな表情をしたままの女神。 彼女は、そっと私の手を握ると、静かにこう語りかけた。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1217人が本棚に入れています
本棚に追加