1217人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
とは言え、何故、全て捨てた筈のスキルが残っているのか。
確かに、『鑑定眼』のスキルは、元の世界では誰もが持っている様なスキルで、所謂『チート』と呼ばれるスキルではない。
(それでも、全てを投げうったからこそ、王真に出逢えたのではなかったのか……?)
何となくその事が気になった私は、今も目の前で「どうしたんだ、どうしたんだ」としきりに騒いで――もとい、構ってくる兄に全てを打ち明けた。
数分後。
「霊感なんて嫌だぁぁ〜!」
幼稚園児の様に、目の前に転がり駄々を捏ねる18歳。
私はそんな兄を器用に避け、室内のミニ冷蔵庫からコーヒーのペットボトルを取り出すと、よく冷えたそれを喉に流し込む。
そうして、甘党な兄の為にオレンジジュースのペットボトルも取ってやりながら、ふと呟いた。
「それにしても……やはり、何故私達にスキルが残っているのだろう」
と、不意にキィィと部屋のドアが開く音がする。
同時に、
「それに関しては私達がお答えしますにゃぁ!」
「だにゃぁ!」
という、何とも幼い声が私の部屋に響き渡った。
「な、なんだなんだ?!まさか幽霊?!」
超速で私に蝉の様にしがみつきながら、声のする方を振り返る王真。
私も彼と同様、声のした――部屋のドアの方に視線を向けてみる。
するとそこには、うちで飼っている2匹の猫達がいた。
最初のコメントを投稿しよう!