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「ユージーン。起きてください、ユージーン」
ーー不意に、私の耳に響いてくるとても優しい女性の声。
(私は……魔王の城で戦っている最中では無かったか……?)
私はぼんやりとした頭でそんなことを考えながら、ゆっくりと目を開ける。
すると、目の前には長い水色の髪をした、美しい女性が立っていた。
「よく頑張りましたね、ユージーン。よくぞ、レグムント帝国を守ってくれました。国の守護女神として、心からお礼を言います。ありがとう。貴方は立派に務めを果たしました」
私を心から労っているのが伝わる、とても優しい声音。
その声や言葉ーー何より『努めを果たした』という台詞から、私は今、自分が置かれている状況を理解した。
「ああ……私は、死んだのか……?」
ぽつりとそう呟く私。
女神は、私の言葉に申し訳なさそうに頷いた。
「国の守護女神でありながら、何もすることが出来ず……本当に済みません」
きっと、本当に申し訳がないと思っているのだろう。
女神の翡翠の瞳には、うっすらと涙が滲んでいた。
(真面目な女性だ……)
私は、そんな女神にゆっくりと頭を振ってみせる。
そうして、微笑みながらこう告げた。
「大切な国や国民を守って死ねるなら、騎士として本望だ」
そうーーこれは、嘘偽りのない私の本音だ。
しかし、それでも申し訳なさそうな表情をしたままの女神。
彼女は、そっと私の手を握ると、静かにこう語りかけた。
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