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「は、花子さんに呪われたぁ?!」
素っ頓狂な声をあげる王真。
と、そんな兄と私の目の前をーータンカに乗せられた女生徒が、救急隊員により救急車の中へ運ばれていく。
その顔色は紙の様に真っ白で、到底生きている人間の様には思えなかった。
(もしや……花子さんに見せかけた魔物の仕業か?)
昨日の猫達との会話から、そう連想する私。
猫達の話では、魔物は弱体化しているそうだがーー万が一という可能性もある。
私は、こそりと王真に話しかけてみた。
「王真?お前の霊感で、何か見えないか?」
しかし、まるで縫いつけたかの様に目を瞑り、王真は何も見ようとしない。
「やだ!俺は見ない!断固として見ないぞー!」
仕方ない。
私は、王真の手をそっと優しく握り返す。
「王真?これは、私たちのここでの生活がかかった大切な事なんだ。1人で見るのが怖いなら、私も鑑定眼で一緒に見るから。だから、ちゃんと確認しよう?」
私の言葉に、渋々と言った様子で頷く王真。
「せーの、だぞ?俺だけ見るのは嫌だからな!せーので同時に見るぞ!せーのっ!」
王真の言葉と同時に――私は、タンカに乗せられた女生徒が出てきた、昇降口前の女子トイレに視線を向けてみる。
するとそこには……全身ずぶ濡れでタオルをかけられ震える別の女生徒と、彼女を守る様に後ろから抱きしめる――宙に浮いたおかっぱ頭の幼い女の子の姿があった。
「花子さんいたー!」
王真は大絶叫ののち、失神した。
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