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すると、トイレの奥から幼い少女の声がする。
「あれは私がした事じゃないわ。私は、あんな酷い事……絶対にやってない」
どうやら花子さんは、あの女生徒をずぶ濡れにしたのは自分ではないと言いたいらしい。
が、それは私の想定内だった。
「ああ。私も、それは分かっている。君は、濡れて震えるあの女の子を守る様に抱き締めていたからな。君とあの女の子がどういう関係なのかはわからないが、君にとって彼女は、きっと大切な存在なのだろう?」
すると、私達のすぐ目の前に――ふわふわと空中に浮いたおかっぱ頭の女の子が姿を表す。
「〜〜〜〜??!!」
叫び出しそうになる兄の口を必死に抑える私。
そんな私達を見下ろしながら、女の子ーー花子さんは、重い口を開いた。
「私はね、ただあの子を助けたかった。それだけなのよ。あの子だけが、私を大事にしてくれたから……」
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