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と、不意に屋上のドアが開く音がする。
同時に、
「それが人間に手を出した言い訳?化け物」
氷の様に冷たい声が辺りに響き渡った。
慌てて振り向く私と王真。
しかし、私達が振り返るより早く、私達の間を真っ白な何かがすり抜けていく。
それは、1本の白い矢だった。
純白の矢は、真っ直ぐに花子さんの胸に向かって飛んでいく。
「あぶねぇ!」
王真の声で我に返ったのか、慌てて避ける花子さん。
しかし、鋭い矢は彼女の腕を深く抉り、傷つける。
「あああ?!」
花子さんは堪らず悲鳴をあげ、膝をついた。
「てめぇ!何しやがる!」
そう叫びながら王真は、いつの間にか屋上の入り口に姿を表した見知らぬ少女を睨みつける。
ポニーテールに結った長い黒髪を夕暮れの風に靡かせ、屋上の入口に佇むセーラー服の少女。
彼女は、王真を見た瞬間、一瞬恐怖に歪んだ表情を見せた。
しかし、少女は直ぐに怒りに満ちた表情を浮かべると、鋭い眼差しで私達を睨みつけてくる。
「お前達、その化け物の仲間かしら?ならば、容赦はしないわ」
そう語りかけながら、背中の矢籠から、新たな白い矢を取り出す少女。
彼女はそれを大きな白い弓につがえると、その狙いを私達に定める。
鑑定眼で見てみたが、擬態した魔物ではない。
霊感や霊力といったスキルが異常に高いが、人間だ。
と、彼女も私達を人間だと判断したのか、弓につがえた矢の先を再度花子さんに向けた。
「化け物よ、滅びなさい」
情け容赦なくそう告げるや、矢を放つ少女。
しかし、少女が放った矢は、花子さんの直ぐ目の前で砕き、折られた。
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