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「人間という生き物は、どこの世界でも野蛮な事だ。自分たちの目的の為には、他の種族を犠牲にしても良いとみえる」
矢が折れると同時、屋上に響く深いーー老成された男性のしゃがれた声。
「何者?!」
少女が叫ぶと同時に、再度矢を放つ。
しかし、再び砕かれる矢。
矢は真っ二つに折れ、乾いた音を立て屋上の灰色の床に落下した。
同時に、花子さんの直ぐ目の前に、先ほどまでいなかった者がゆっくりと姿を表す。
一見すると人間の貴族の様な、上品な服装に身を包んでいるがーーその身の丈は花子さんよりかなり小さい。
黒いシルクハットに黒い燕尾服を纏った、花子さんの腰ほどまでしか背丈のない老爺。
彼はニヤリと嫌な笑みを浮かべると、ひょいと花子さんの肩に飛び乗った。
「あいつは……!」
その老人に見覚えのあった私と王真が同時に駆け出す。
「花子さん、離れろ!そいつは魔物――死霊伯爵だ!」
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