1217人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
そうーー私がリスティファの率いる軍勢と戦っていた際、一番厄介だったのがこの魔物だったのだ。
普通のリッチはしぶといだけのただの死霊なのだが、このリッチは違う。
伯爵というその名の通り、他の死霊達を束ね、纏める事ができるのだ。
だが、厄介なのはそれだけではない。
この死霊伯爵は、甘美なる誘惑を以て同じ霊や魔物、果ては人間にすら取り憑き――意識までも取り込み、意のままに操る事が出来るのである。
勿論、取り憑かれた者達が持つスキルを使用することも可能だ。
加えて、死霊伯爵自体が持つ能力も使用可能である為、大変厄介な相手だったのである。
(故国で戦った際は、確かにこいつは私が仕留めた筈だが……)
ーー魔族との大きな戦の際、先陣を切ってレグムント帝国に攻め込んできたのだ、この死霊伯爵が率いる死霊の軍勢達だったのだ。
彼らは、前もって墓場から騎士団や勇者一行の縁者・知人の遺体などを盗んで来ておりーーその遺体に入り込んで、我々に襲いかかって来た為、大変な苦戦を強いられたのを、私は今もよく覚えている。
「だが……それでも、お前はあの時、確かに私が仕留めた筈だ」
そう、最終的には斃れた騎士団の仲間の遺体すら使役して来た死霊伯爵。
私は、そんな彼の卑劣さに怒りを覚え、勇者や魔法使いと連携して彼を切り裂いたのだ。
――その、魂ごと。
なので、死霊伯爵がそもそも生きている筈がないのである。
しかし、目の前にいるのは確実にあの死霊伯爵な訳でーー。
現に、私の鑑定眼も、あの死霊伯爵が本物だと結果を示している。
最初のコメントを投稿しよう!