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すると、動揺する私の心の内を読み取ったかの様に、死霊伯爵が口を開いた。
「私が生きていることに、さぞ驚かれていることでしょう、王子。けれど、私はそもそもが死霊。貴方に斬られる寸前に、自分の魂の一部を切り離し、生き長らえていたのですよ」
嫌な笑みを浮かべながら、どこか誇らしげにそう語る死霊伯爵。
彼はそのまま、隣でーー矢で手傷を負い、痛みに動く事が出来ずにいた花子さんの耳元にそっと顔を寄せると、甘く囁きかける。
「死霊のお嬢さん。私は貴女の仲間だ。ねぇ……貴女の大切な友人を苦しめた愚かな人間に、復讐をしたいとは思いませんか?」
「ダメだ!耳を貸すな!」
慌ててそう叫ぶ王真。
けれど、花子さんはーー死霊伯爵のその甘美な囁きに、興味を抱いてしまった様だった。
「復、讐……?」
戸惑いと恐怖ーーそれに、ほんの少しだけの期待が入り混じった瞳で、死霊伯爵にそう尋ねる花子さん。
死霊伯爵は、彼女の言葉に満足そうに微笑むと、大きく頷いてみせた。
「ええ、そうですよ。人間が、貴女の為に何をしてくれました?彼らは、何もしていない……ただトイレに住んでいた貴女を、勝手に恐れ、化け物だと決めつけた。そうして、今……愚かなる人間は、貴女の大切な者まで奪い去ろうとしている。貴女は、本当にこのままで良いのですか?あの娘が貴女に希望を与えてくれたのでしょう?」
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