Crash!〜元魔王と元騎士の優雅なる?転生生活〜

34/52

1217人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「雄英?!おい、雄英!何で俺なんか庇うんだよぉ!」 腕の中で、兄が涙を零しながらそう叫ぶ。 しかし、水の弾丸の雨が止むことはない。 と、背中に大きな激痛が走った。 (もしかしたら……何発か、食らったのかもしれないな) でも、それで良い。 今度こそ、兄をーーこの腕の中にいる大切な存在を守り切る事が出来るなら。 だからーー。 「大丈夫だ、兄さん……。必ず、兄さんは、私が守る……」 そう告げた瞬間、涙を拭う事もせず、私をぎゅっと抱き締めてくる兄。 が、彼は直ぐにはっとした表情を浮かべ、その手を離した。 見ると、私の背中に触れた兄の手が真っ赤に染まっている。 (ああ……やはり……) 何となくそんな予感はしていたがーー驚くことはなく、己の血で真紅に染まった兄の両手を見つめる私。 花子さんは水の球に乗り、優雅に空中に浮かんだまま、そんな私達を見つめるとーーその唇を三日月の形に歪ませる。 「弱い者いじめはこの位にしてあげるわ。だって、私が消したいのはあなた達じゃないもの。だから、あなた達は見逃してあげる。精々、泣き叫んで私の恐怖を伝えていきなさい。きゃははははっ」 耳に残る、甲高いーー不快な笑い声を残し、空に消えていく花子さん。 そんな彼女の後ろ姿を見送りながら、私は意識を手放した。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1217人が本棚に入れています
本棚に追加