Crash!〜元魔王と元騎士の優雅なる?転生生活〜

35/52

1217人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
あれから、どれ位の時が経ったのだろう。 目を開けるとーー私の視界には、見慣れない木の天井が飛び込んできた。 起きあがろうと体を動かすと、至る所から痛みが襲ってくる。 「……そうか……私は、あの時花子さんに水の弾丸で攻撃されて……」 自分に起きた出来事を確認する様に、そう呟く私。 ゆっくりと体を起こし、辺りを見回してみるとーーそこは、とても和風な造りの部屋だった。 私が寝かされていた布団の周り等は、なんと几帳(きちょう)が立てられているのである。 (平安時代に迷い込んでしまった様な部屋だな……) 一体、今自分は何処にいるのか。 そう不安に思っていると、ガサァッという派手な音がして、この部屋の扉の代わりであったであろう御簾(みす)が開けられる。 そこから覗いた顔はーー。 「雄英!!良かった!!目を覚ましたんだな!!」 私が一番守りたい、最愛の兄の顔だった。 恐らく私の包帯を替えにきたのだろう兄は、手元にあった替えの包帯の束を投げ出すと、勢いよく私に飛びついてくる。 「また、心配をかけてしまったな、兄さん」 正直、まだ傷が治りきっていない為、全力でしがみつかれると体に痛みが襲ってくるがーーそれでも、この兄から与えられるものは、痛みですら甘美に思えるから不思議だ。 私は、兄の背中に腕を回すと、その腕にそっと力を込めた。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1217人が本棚に入れています
本棚に追加