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「兄さんが無事で、本当に良かった」
心から吐き出す様に、そう呟く私。
と、兄は急に不機嫌そうに頬を膨らませ、顰めっ面になる。
そうして、私の頬を己の両手で、そっと包み込む様に触れて来た。
「雄英のばか。前にも言ったろ?……俺は、また雄英と一緒に生きたくて、この異世界に生まれて来たんだ。お前が先に死んじゃったら、何の意味もないんだよ」
真摯な瞳で、そう伝えてくる兄。
その一途な思いが本当に嬉しくて、私は大きく頷きつつーーつい、頬が緩んでしまうのを堪えきれなかった。
すると、再度ーー今度はパサリと静かに御簾が開く音がする。
振り返るとそこには、着物姿の菜乃が立っていた。
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