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「さっきは、熱くなって悪かったわね」
菜乃はそう告げると、後ろに控えていたーー同じく着物姿の女性達に指示を出す。
と、私たちの目の前にとても豪勢な料理が次々と並べられ始めたではないか。
「これは、迷惑をかけてしまった私からのお詫びよ。受け取ってちょうだい」
バツが悪そうにそう告げながら、彼女は私達の前に座ると、ゆっくりと畳に手をつき、頭を下げた。
「どんな理由であれ、一時の感情に飲まれて一般人であるあなた方を巻き込み、怪我をさせてしまうなんて……私は、人間を守る陰陽師として最低のことをしてしまったわ。本当にごめんなさい」
静かな声音でそう告げてくる菜乃ーーしかし、その声は僅かに震えていて。
よく見ると、畳についた手すらも小さく震えているその姿に、私は彼女の後悔の深さを感じて「いや、大丈夫だ」と声をかけた。
(きっと、彼女も前世の私の様に……自分の使命を果たそうとしただけなのだ)
胸中でそう呟く私。
「それでも、悪かったわね。ごめんなさい」
菜乃は、何度も謝りながら、頭を下げ続けた。
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