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そう、『憑依』。
これが、菜乃が考え出した私達の秘策だった。
と、いうのも、幾ら式神が強くても、憑依させる人間の肉体や魂がその負荷に耐えられなければ、憑依されても動くことは出来ない。
また、そもそもーー憑依された人間に舞踊や戦闘の心得がなければ、式神が幾ら肉体を操作したとしても、出来ることに限界はある。
「残念ながら、私は……自らに憑依させたとしても、花子さんを止めることは出来ないと思うの。私は、少し柔術をかじっている程度で、弓矢以外の訓練経験があまりないのよ」
菜乃の言葉に考えながら頷く私。
「であれば、菜乃に憑依はさせない方が得策だな。もし、菜乃が憑依して戦ったとして、万が一憑依が破られる様なことがあったら、ただの高校生の私と王真だけでは花子さんに太刀打ち出来ない」
そうなれば、私達は全滅すること必至だ。
「……そう。でもね?……さっきあなた達、確か前世の記憶があるって言ってたわよね?なら、もしかして……前世で戦った時の記憶や、修行をしていた時の記憶もあるんじゃない?」
菜乃の言葉に「確かに」と頷く私と王真。
「なら……ぶっつけ本番にはなるけれど、前世で戦いの経験があるあなた達に式神を憑依させたら、上手くあいつと戦うことが出来ないかしら?幸い、前世の記憶という大きな負荷を元から魂に生まれ持っているあなた達なら、きっと式神を憑依させる負荷にも耐えられると思うのよ」
菜乃の言葉に一瞬逡巡する私と王真。
だが、それしか花子さんや女子高生達を救う方法がないのならーー。
「……よし、やってみよう」
私は、菜乃の言葉に大きく頷いてみせた。
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