Crash!〜元魔王と元騎士の優雅なる?転生生活〜

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王真のーー魔王リスティファの告白に、その場にいた菜乃だけではなく花子さんですら身を固くし、息を呑む。 「結果、ユージーンは生き返ったけど……俺は、人類の裏切り者――史上最低の魔王と呼ばれる様になったんだ。仲の良かった人達にすら石を投げられ、友達だった奴らには恐れられ、本当に悲しかったな。でも、一番悲しかったのは、人間に嫌われた事じゃない。そこまでして救った筈のユージーンに、泣かれた事なんだよ」 そう話しながら、悲しげに微笑む王真。 「蘇ったユージーンは、全てを知ると、俺にこう言ったんだ。『友よ、私はお前の人生を犠牲にしてまで生きたくはなかった。大切なお前を不幸にしては、お前が隣にいなくては、私は生きている意味がない』ってさ。なぁ?花子さん。あんたの親友は、あんたがこんなことをして……喜ぶ様なやつなのか?」 花子さんは、王真の言葉に俯いた。 「……ち、がう……」 王真の言葉に、消え入りそうな声でそう答える花子さん。 「……あの子は、幽霊の私にも優しい……花を愛する、心の優しい子だった……。誰かを傷つけることなんて、望まない……」 彼女がぽつりぽつりと言葉を告げると同時、彼女の髪が短くなり、背丈が小さくなり始める。 きっと、死霊伯爵の誘惑が効かなくなって来たのだ。 そんな花子さんの頭を優しく撫で、慈愛に満ちた顔で微笑む王真。 「だよな。お前言ってたもんな。毎朝、お前のために花を飾ってくれる優しい子だ、ってさ」 その王真の台詞に、涙を浮かべ、何度も頷く花子さん。 と、完全に死霊伯爵の誘惑から逃れたのかーー花子さんの姿は、いつの間にか出会った当初のおかっぱ頭の童女の姿に戻っていた。
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