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「……ああ、全て思い出した」
前世の自分の人生ーーその全てを思い出し、私は保健室のベッドの中で大きく息を吐いた。
『今」の私の名前は、天魔使 雄英、17歳。
現代の日本で暮らし、有明の高校に通っている――ごく普通の高校2年生だ。
母親譲りの金髪碧眼で、所属している剣道部では主将を努めている。
ちなみに、父親は日本人で、母親はイギリス人。
それに、1つ年上の兄が1人と猫2匹の、合計6人家族で暮らしている。
現在の時刻は午後の16時。
2時間ほど前まで、私はクラスメイト達と体育館で体育の授業(ちなみに今日はバスケットボールだ)を受けていた。
同時に、体育館のステージ上で、夕方に行われる学校説明会の準備をしていた兄に気付いた私。
そんな兄の頭上に、照明器具が落下しそうなのを目撃した私は――全力でその場に駆け付けると、兄を突き飛ばして、そのまま壁に強く頭を打ちつけ、気絶してしまったのだ。
(それにしても、まさか気絶したことで前世の記憶が蘇るとは……)
我ながら、自分は昔から平和であること――特に、家族や友人を何かと大切にする方だと感じていたが、きっとあの前世が原因だったのだろう。
平和で、家族や友人がいなくならない世界。
前世の故国に比べたら、この現代日本はまさにそれに当て嵌まる。
(どうやら、あの女神はちゃんと約束を果たしてくれた様だ)
私は心の中で女神に感謝の言葉を告げると、ゆっくり上体を起こした。
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