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これで、今回の事件は大団円ーーと、思いきや、私達の足の下から猫達がひょいと顔を出して来た。
「何これで終わりみたいな空気を出してるんにゃぁ」
「この世界に逃げて来た魔物は、まだ99匹いるんですにゃよぅ」
そうだ、忘れていた。
「その、魔物退治。良かったら、私も手伝わせて貰えないかしら」
猫達の言葉に私が苦笑していると、向かいの席の菜乃が不意にそう問いかけてくる。
「今回の件では、私もあなた達には助けられたしね。何より、大事なことを教わったもの。その恩を返したいのよ。あなた達だって、私がいた方が心強いでしょう?」
確かに、陰陽師として優秀なーーそれこそ、所謂チートな菜乃がいてくれればこれほど心強いことはない。
と、隣の花子さんもひょいと身を乗り出して来た。
「じゃぁ、仕方ないから私も手伝ってあげる。これでも、この世界では古参の怪異なんだから!偵察や情報収集は任せてよ!」
頼もしい彼女の言葉に、頷く私と王真。
猫達も、満足そうに頷いている。
そんな兄や新しい仲間達の顔を見回し、私は自分のカップを手に取った。
「ならば、折角だから乾杯しないか?私達のーー新しい仲間の出会いと、これからに」
「いいな、それ!」
王真は私の言葉に嬉しそうに目を輝かせると、早速レモネードが入った自分のカップを持ち上げる。
菜乃も頷きながら緑茶の入ったカップを持ち、花子さんと猫達はそれを眩しそうな表情で見守っていた。
「私達の出会いと、花子さんや愛美さんの新しい出発、それにーー私達の新しい冒険に!」
『乾杯!』
「「にゃー!」」
私達4人と2匹の声が重なり、軽くグラスのぶつかる音がホールに響き渡る。
ーー私たちが進む未来が、これからも輝かしいものであります様に。
そんな祈りを込め、私と兄はテーブルの下でそっと互いの手を握り合った。
願わくば、もう2度とこの手を離すことがない様にーー。
私は、命が続く限り――今度こそ、この兄を守っていこう。
【完】
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