絆創膏とイワナ

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「角坊は食べ方が綺麗だね」  杜番に話しかけられて意識が戻った。イワナは残り一尾になっていた。飯はなくなっていた。 「……いや……普通」  綺麗も何も、これしか知らない。教えられたとおりの作法で食べているだけだ。 「そっか。いいことだよ、とても」  杜番が俺に話しかけたので、風志朗がこちらに興味を示した。イワナの顔をじっと覗き込んでいる。杜番と一食を分け合っているから足りないのだろうかと思ったが、ヤマメはまだ半分ほど残っている。 「……これ、食べるか?」  杜番に聞いてみた。 「おや、美味しそうで気になっちゃったかな。悪いね。……風志朗、それは角坊のごはん。風志朗のヤマメさんまだあるよ」 「……」  あまりに真剣に見ているので、食べさせてみたいと思った。新しいイワナの身をとって、汁物の蓋に分けた。小骨がないか確かめて、杜番に渡した。 「……やる」 「いいの?ありがとう、いただくよ。……風志朗、角坊にありがとうって」  そんなものはいらなかった。ただ、風志朗が俺の分けたイワナをじっと見て、小さな口でほおばって、ほとんど丸呑みのように食べる様にどうしてか、どうしようもなく満足してしまった。
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