絆創膏とイワナ

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 食べ終えると、杜番と食事をしているのが不思議な気分になってきた。家族以外と食事をしたのは初めてかもしれない。食事は一人で食べるのが一番ましだと思っていたが、この場所も、杜番と食べるのも悪くはなかった。  食事の時間はいつも緊張する。特に兄上が一緒のときは味がしない。兄上は食が細く、普通に食べる俺のことが気に入らないから、向かいに座る俺を睨む。  兄上のことを考えたら、医者の言っていたことを思い出した。杜番が薬を仲介していると。薬の行商人について聞いてみた。 「鬼に効く薬ね。今度来る商人に聞いてみるよ。確かに鬼は特別に体が強いんだ。薬も毒も生半可じゃ効かないんだろうよ。角坊が今負ってる怪我だって、私なら命に係わるし、助かってもひと月は動けないだろうね」  兄上は簡単には治らないようだ。 「不安にさせたね、ごめんね。お兄さんのことは心配だろうけど、子供の病弱なんてことはよくあるさ。時期がくれば良くなるんじゃない」  兄上の心配など一つもしていないのに、杜番は困った顔で、俺を安心させる口調で言う。 「……いつ?」 「う〜ん、私も詳しくはないんだ。すまないね。でもずっとじゃないと思うよ。大人になれば体も強くなってさ……」  大人まで待っていられない。兄上とはそんなに歳が違わない。そんなのを待っていたら、俺も大人になってしまう。 「……」 「そうじゃないってカオ?」 「……俺より……兄上が、家……継いだ方がいい」 「ほう、その心は」  兄上は長男だし、なにより家を継ぐ気がある。俺は体が動けるから、兄上の代わりになっているだけだ。 「……いや……」  喋りすぎてしまった。外で不要なことを喋るなと父上に言われている。兄上が病であることも、俺が跡取りを望んでいないことも、「不要なこと」だ。  客がまばらになった店内で、女将がぜんざいを持ってきた。頼んでいないのに俺の分もある。 「丁度ぜんざいが来たね。それを食べながらおじさんの話を聞いてよ」
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