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清少納言
◆
「ああ、こんな無学の輩やからに討たれるのはさぞ、御無念であったろう。
大陸の古い書物に『死んだ名馬の骨も大事にした』という賢人の話があるのだ。教養のない、お主には、意味などわかるまいが」
「いったい……何を言っておられる……」
「湯浅ごときに、もったいない最期の問答。お主は知らなかったのか?
清原致信の妹御いもうとごは、中宮定子様にお仕えした、清少納言様じゃ!
引退されたとはいえ、あの才気気品、溢れる御方を殺害するなど、言語道断!」
「権左殿、でっちあげにも程がある!
なぜ見てきたような嘘を言い立てなさる。
女など斬らせておらぬ!
ましてや、清少納言とやらなどは、おらなんだぞッ!」
氏元が顔色を変えた。
「氏綱ッ!」
景信がにやりと笑った。
「その言い様……さては氏綱殿も、現場におったと見える。氏綱殿も、御同行願おうか」
氏綱が、唸って刀を抜いたが、景信は、なおも続けた。
「……この景信が邸内に入ったらば、伏せていた検非違使所属の手練れ五十人がこの屋敷を取り囲む手はずになっておる。
この景信を斬れば、謀反人として一族郎党ことごとく斬り死にの憂き目を見るがそれでもよいか?」
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