電脳疑似通話-AIBANA-

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「じゃあ今日の夜はいつもの場所で飯でも食うか」 『うん!わかった。じゃあ待ち合わせ、赤城駅で7時ぐらいでいい?』 「ああ、わかった。遅れるなよ?」 『もう!裕司の方こそ遅れないでよ!じゃあ……待ってるからね!』 その男は電話を切るとニヤニヤと口元をゆるめた。 「おい裕司、今のお前めっちゃきもいぞ」 「う、うるせー!俺は今、真理ちゃんとの至福のひと時に浸ってんだ!じゃますんな!」 「はいはい。で、行くのか?赤城駅。今から行ってもつくのは明日だと思うけど」 「おい!行くわきゃねーだろ!そして比呂は俺の妄想に入ってくるんじゃねー!まあ、仕方がないから説明してやろう。赤城駅ってのはな、俺の愛する真理ちゃんが活動するホームグランドに近い駅。主人公の達也と初デートの待ち合わせに使った駅なんだよ!」 その男の言葉に、もう一人の男は「ヘイヘイ」と興味なさそうに適当な返答をしていた。 その男が使っていた電脳疑似通話、AIダイヤルシステム『愛話-AIBANA-』について少し語ってみよう。 最近話題のそのサービスはサイト内に用意されたキャラクター、つまりは人気アニメの声優が吹き込んだキャラクターを中心に、選択したキャラとの会話と楽しめる疑似通話サービスである。 爆発的な人気を誇るのも当然だろう。こちらの話した内容に沿った会話をAIが組み立て、あらかじめ収録されているボイスを元に組み変え、ごく自然にで返答してくれるのだから。 すぐに似たようなサイトが乱立して行く中、この-AIBANA-は他の追随を許さないのは訳がある。 大手ショッピングサイトの手掛けるこの会社、音声認識でネットショッピングができてしまうというそのサイトの主幹でもある音声認識サービス。 そのアルゴリズムをそのまま流用しての高度な音声認識、それに加え莫大な資金力を背景に大物シナリオライターなどと専属契約して、日々会話の調整にも余念がないと言われている。 そのためハイレベルなものが提供されている。 タイアップ企画も次々に量産され、今やネットゲームの吹き替えに負けず劣らずの声優さん達の稼ぎの場となっているのだ。 動き出したそのコンテンツはあっという間に大衆に受け入れられ、ビッグコンテンツとして成長するのは当然であろう。 この-AIBANA-は登録無料で月30分まで利用が可能である。 300分の月額1,000円のサブスクリプションから月額20,000円の無制限プランまで用意されている。高額な無制限プランを選ぶものも多い。 さらには人気アニメのタイアップキャラを無制限プランのユーザーのみが10,000円で購入できるという。 世にはそんなお金の使い方をするものも多いというのだから、安月給の俺には驚きな話である。 そんな大盛り上がりを見せるそのコンテンツに、最近一般参加のボイス提供も可能なサービスが追加されたのだから、さらにその人気は加速していく。 アイバーと呼ばれるようになったそのボイス提供者は、-AIBANA-の事務所と提携して多数のボイスを収録する。そして用意された数百の受け答えパターンによりそのキャラに命を吹き込んだ。 有料ではあるが人気のイラストレーターさんがキャラ絵を提供してくれたりもする。定期的にボイスの更新やパターンのより精密なアップデートも繰り返され、より自然に会話を楽しめるようになってゆくのだ。 そのアイバーの命を吹き込んだキャラには、利用時間によってポイントが可視化されていく。当然それによって収入を得ることができるのだ。 華やかな反面、人気の無いアイバーさんはポイントが0というも見かけるのだ。 自分の写真かは分からないが、掲載された写真と用意されたプロフィール設定とサンプルボイスで、耳の肥えたユーザーにふるい落とされるからだ。 これは、そんな-AIBANA-を利用する一人のユーザーのお話である。 ◆◇◆◇◆ 「へー、これがアイバナねー」 俺は暇だった日曜の夜。 人気だと同僚の裕司から勧められたサービスを眺めていた。 裕司はこのサイトに無制限で登録していて、好きなアニメキャラとの会話を四六時中を楽しんでいるようだ。気分は10股してるプレーボーイだとか… アニメもそんなに見ない俺は、何がそんなに楽しいかわからんがとりあえず登録だけしてみるか、と思いメールアドレスを入力していった。 すぐに認証コードが届きそれを入力していく。 連日「お前もやってみろ」と言われ続け、登録だけでもしないと五月蠅いなと思ってしまったから登録したものの気が重い。 『登録が完了しました』 急に話しかけられたように可愛い声で登録の完了が告げられ、びくっとなってしまった。こんなに突然しゃべりだすのか…とてもじゃないが会社じゃ起動できないな。 俺はベットに寝ころびながら登録を進めていく。 「武田、比呂っと」 『まずは苗字の呼び方を教えてね』 またも可愛い声でしゃべりだす。 「呼び方?」 画面の選択肢に従ってカタカナでタケダと入力する。 「これは、なんだ?イントネーションか?」 いくつかの矢印のパターンが選択できるようだ。俺は試しに右上がりの矢印を選択してみる。 『タケダ』 「うお!」 またもビクッとしてしまう。そうなるのか。 俺は矢印の通りに語尾が上がった音声で名前を呼ばれ笑みが漏れる。なんだよその呼びかた。どっかの外国人か何かかよ。俺は適当に形の変わった矢印を選択してゆく。 少し平坦に近い矢印を選択したところでしっくりきた呼び方をされ、これでいいだろう。と[決定]ボタンをタップした。 そして名前に移ったのだが、説明には『ちゃん』とか『さん』とか敬称も付けれるようだ。さらには名前や親しい人の呼び方、職業や仕事内容まで選択する項目があった。細かすぎるその設定に若干嫌毛がさしてくる。 1時間ほどの時間をかけ、ようやく全ての設定が終了した。 そして人気のトップ10やアニメタイアップなどが表示されている中、素人のアイバーコーナーを見る。 ポイント順で表示されている中、ひねくれた俺は最終ページから覗いてみる。 何頁かポイント0の可哀そうなアイバーたちを眺めていると、あけみと表示されたIVer Name(アイバーネーム)の部分で指を止める。 あけみ。 俺の元カノ名前。 すでに眠気を感じていた俺は、なんの気なしにその名前をタップする。写真は黒髪のロングで顔はうっすらぼかしが入れられ隠れているようだ。みんなこの時点で次にいっちゃうんだろうな。 戸惑いを隠すようにそうつぶやく。 職業はOLで社長秘書をやってますって… 「は、はは…」 俺は夢でも見ているのだろうか… そしてサンプルボイス1をタップすると、 『ひろさん』 設定した愛称を言われ、思わずスマホを投げ捨てる。 ハアハアと息が荒くなる。そして飛びつくように投げ捨てたスマホを手にする。 「よ、よかった。壊れてはい無いようだ」 すでに頬まで伝う汗を感じる。 そして、サンプル2をタップすると、 『お仕事ご苦労様です。今日もひろさんの好きなもの作って待ってるから…早く帰ってき…』 「やめろー!」 俺は叫びながらスマホを放り出すとベットに飛び込み布団をかぶった。 あの写真…それに社長秘書? 何より、あの声… あのしゃべり方… そしてあの会話… 元カノのあけみそのままじゃないか… ありえない出来事に震えながら夜を明かした。 気付けば寝ていたようで布団から体を起こす。 窮屈な態勢のまま寝ていたため、体中が痛い。 スマホを恐る恐る手に取り画面をつけ確認すると、当然ながら昨夜と同じ画面を映していたため、また呼吸が荒くなりそのままそのページを閉じ、ふらつく足取りで会社へと向かった。 ◆◇◆◇◆ 結局、裕司には登録はしたとだけ告げると、何も聞くことはできなかった。 聞けるはずもなかった。 AIで、死んだ人間を演じることはできるのか、なんて… そして本来は嬉しいはずの残業無しで終わった帰り道。 コンビニで晩飯と一緒に-AIBANA-関連の雑誌を購入する。 自宅へ戻ると、購入した雑誌をパラパラとめくり見る。 遺族の為の音声サービス? 中盤に書かれていた文字にドキリとする。 これか? その記事を読み込むと、亡くなられた遺族の音声データをもとに、挨拶などに基本的な音声を作成してくれるサービスのようだ。 10ボイスで3万か…それなりにするが、遺族の気持ちを思えば安いのだろうな。 そう思いながらも、これを他の登録者が使うと可笑しなことになるんじゃないか?と思ったが、どうやらサンプルの10個のみで実際に会話はできないようだ。 そうか…これか!これなんだな! 安堵しながら再びあのページをブラウザの履歴から開いてみる。 その雑誌の記事に書いてあるように、[通話]ボタンがグレーアウト…はしていなかった。という事は、実際に会話ができるということだ… 似た声の人だっているよな… そんな偶然だったのだと考え、無料分ならと[通話]ボタンをタップする。 プルルル… 数度のコールの後に、通話が開始される。 『あっひろくん?もう仕事終わった?』 またスマホを投げ出しそうになり顔を歪める。 『ねえ、どうしたの?』 「あ、ああ」 『大丈夫?何かあった?』 俺は、息をするのも忘れそうになり、また全身が震えが冷や汗が出る。 「お前は…だれだ…」 かろうじて絞り出した返答に数秒の沈黙。 『何、言ってるの?大丈夫?』 「もう、やめろ…」 さらに声を絞り出す。 『とにかく、帰ってきてよ!。話、しよ。私は大丈夫だか…』 俺は咄嗟に[終話]ボタンをタップしてベットに横になった。 ――― とにかく、早く帰ってきてよ!話し合いが必要だと思うの。私は、大丈夫だから…ね?私はひろくんだけを愛してるの…分かってよ! なぜ、あの時の会話と同じような会話が返ってくるのか… 考えるほど、呼吸が苦しくなる。 そしてトイレへ駆け込み。胃の中の物を吐き出した。 胃酸が吐き出され気持ち悪さが止まらない。 考えてみたら晩飯もまだ食べていない。 だが食べる気も起きない… そして俺は、ベットに腰掛け、再び[通話]ボタンを押した。 『あっ!ほんとにどうしたの!早く帰ってきて!私、待ってるから!』 そんな声が聞こえる。 「どこで、待ってるって言うんだ…」 『そんなの決まってるじゃない!今更何を言ってるの?とにかく、話しよ。待ってるから、あの、夜景の見える(・・・・・・)あの日の場所(・・・・・・)で…』 俺は茫然としつつ[終話]ボタンをタップすると、そのまま意識を失うようにベットに倒れ込んだ。 ◆◇◆◇◆ 電話の音に驚き飛び起きる。 重くなった体を起こし這うようにして、床の上に放り出されたスマホまでたどり着く。 恐る恐る画面を見ると、裕司からの着信のようだ。 ああ、もう10時か…完全に遅刻だ。 『おい!重役にいつ昇進したんだ!俺の給料をあげろ!』 「馬鹿なこと、言ってんな」 『元気そうじゃねーか。寝坊か?』 俺は一瞬考える。 「いや、ちょっと調子が悪くてな。部長には、休むと言っておいてくれ。じゃあな」 『おい!ちょっ…』 裕司がしゃべっているのをかまわず電話を切った。 水… 口の渇きに冷蔵庫まで行くと、2リットルのペットボトルにそのまま口をつける。 何か、食わなきゃ。 そう思って昨夜雑誌と一緒に購入しておいた弁当を袋から取り出す。 涼しくなってきたし…危なそうなものは入ってないよな…そう思って冷えたご飯を割りばしでつまみながら、やはりスマホを見てしまう。 もう一度だけ… そう思いつつも弁当をなんとか胃に流し込む。 「ふぅ」 食事を終え、少し落ち着いた俺はスマホの画面をつける。 『おはよう。昨日は、眠れた?』 あの時のままのあけみの声… 「ああ。なんとか…」 『私、ひろさんが来るまで待ってるからね…』 「だからどこに…」 すでに呼吸が荒くなる。 弁当、食べきるのは失敗したかも…込み上げる物を感じながら返答を待つ。 『また、やり直そう?ひろさんだって、あの日のことは私が悪くないって分かってるでしょ?』 「だから何を…」 『私は!ひろくんを今でも愛してる!…社長とは、無理やりだって、言ったじゃない…』 「無理やりだろうとお前が社長に抱かれた事実は変わらない!」 思わず思っていたことを返してしまう。 これは、あけみでは無いはずなんだ… 『あの日、私はひろくんと、やり直したくてあの場所に行ったのよ。最後のデートにはしたくなかった…だから、言われるままに車を降りたのに…』 「お前は何者なんだ!」 『ひどいよ!』 「お前は…誰、なんだ…」 『私は、中野あけみ…ひろくんは私のこと、もう忘れようとしてるのね…』 「うわーーー!」 俺はスマホを力いっぱい叩きつけ、画面が割れ破片が散らばった。 着の身着のままふらふらと外へ出る。 駐車場の車に乗り込むと、あの山まで走らせる。 あの日と同じように… 他の男に抱かれた怒りと、許したい愛情を葛藤させながら… あの場所へとたどり着き、ゆっくりと辺りを警戒しながら車を降りた。 懐かしい場所?いや、一度しか来たことのない場所だ。 今はまだ明るいが、あの日の夜は夜景が綺麗だった… そんな場所で… 俺はあけみを殺した… たしかにこの場所だ。 すでに草が生え始めているこの場所で、 あれから2年たったこの場所で… 俺はあけみの名を叫びながらガリガリと草地を掘る。 確かにここだ。 間違うはずが無い。 俺は、あの日、この場所であけみを殺し、 そして車に用意していたシャベルで穴を掘り… そして埋めた… 指がボロボロになるほど何度も掘る。 当然それほど掘れるものでもない。 それは分かっている。 指先からは血が流れ、それでもやっと出てきた土を掘る。 そして骨が見え、痛みで顔を歪める。 「どこだ!どこにいる!あけみー!」 早く助け出して謝ろう。 そしてちゃんと別れを言おう。 そうしたら、俺にまとわりつくことも無いだろう。 そんなことを思いながら土をかき、そして俺の意識は途切れて行った。 ◆◇◆◇◆ 『続いてのニュースです。 昨日、都内の西〇山の山道から少し離れた場所で、都内に務める会社員の武田比呂さんが亡くなっているのを、通りかかった登山客が発見しました。 武田さんは手で土を掘っていたようで、発見時は指の骨が見えていた、という話も関係者から確認しています。また、その土の下から、20代の女性の物と思われる白骨死体も発見されたとのことです。 発見されたのは、中野あけみさん。2年ほど前に御家族様より失踪届が出されており、2人の関係を捜査中とのことです』 「はは。思ったより早く音を上げたな…もう少し、あいつの悲痛な叫びを聞きたかったが…まあいいだろう」 私は夕方のニュースに頬をゆるませる。 そしてスマホに着信がありすぐに出る。 「はい。どうしました?」 『正樹さん!ニュース!比呂が!』 案の定、大学の後輩の牧田裕司からの電話だった。 「ああ。私も見てますよ。残念なことですね」 『俺は、AIBABAを紹介しただけっすよ!正樹さんに言われて、比呂に、それをはじめたって聞いて、その時、具合わるそうだったけど、そして次の日には仕事を休んで…それで、こんな…』 狼狽えた様子の後輩に笑いが込み上げるのを堪える。 「大丈夫ですよ。裕司くんはただ自分が好きなサイトを使っているのを、何度も同僚に聞かせただけ…ただそれだけですよ」 『でも…俺…』 「そんなに心配しないで。裕司くんは何も話さなければ、何の罪にもなりませんよ。それより…N〇Kで、うちの社長が会見が始まります。見逃しちゃダメですよ」 『はい…俺が、何も話さなければ、大丈夫、大丈夫ですね』 「はい。大丈夫です。では…」 私は電話を切ると、テレビの画面に視線を移す。 私の所属する会社、AIBANAを運営するサイバーラブリーの代表取締役社長、曽根崎琢磨の会見が始まっていた。 『ですから、わが社は協力を惜しみません。警察にも亡くなられた彼の利用音声を提供しています。一部プライバシーに配慮している音声をここでもお聞かせいたします。 もちろん警察にはそのままのデータでお渡ししてますが、わが社に何も隠し立てすることはないので。亡くなられた彼には残念なことですがね…』 そして琢磨社長が合図を送ると音声が流れてくる。 ――――――――― 『おはよう。昨日は、眠れた?』 「ああ。なんとか…」 『私、ひろさんとのデート、楽しみだな』 「だからどこに…」 『また、公園でお弁当食べる?』 「だから何を…」 『私のお弁当は、嫌?』 「無理やりだろうとお前が社長に抱かれた事実は変わらない!」 『何を言ってるの?』 「お前は何者なんだ!」 『あけみだってば』 「お前は…誰、なんだ…」 『私は、あけみ…ひろくん、どうしたの?大丈夫?』 「うわーーー!」 ――――――――― 『と、このように、亡くられた彼との会話はかみ合っていない部分も多く、非情に錯乱しているような会話をしているようです。悔やむとしたらこのような不安定な心理を読み取り、通報などのシステムを考えれたらと思っております。 まあ、彼の元交際相手の失踪された、なんでしたっけね、中野あけみさん?彼女が失踪する前にはその会社の社長さんから乱暴されたって話も、おっと。これはカットで、えっ?生?いやー困ったなー。 まあ、彼と彼女で何かがあって、あけみという名前から錯乱してしまったのでしょう。該当のIVer Name(アイバーネーム) あけみさんですが、すでに退会しております。 もちろんわが社としても免許証などで本人確認はしておりますが、本名は別名、まったくの別人ですよ。それはしっかりと確認済みです。本人も大変当惑しているとのことで…時間?では、このへんで…』 琢磨社長も中々演技がうまい。 感心しつつ笑いをこらえる。 「ふう。正樹、どうだった?」 「琢磨社長。最高でしたよ」 会見場の控室に居た私の元に社長が笑顔で入ってきた。 「そうだろ!それより、例のバージョンアップはいつくらいに行けそうだ?」 「それならいつでも。タイミングは社長が決めてください」 「分かった」 そうして笑顔で部屋から出ていった社長。先の会見で言っていた通報に値する音声の認識プログラムはすでに用意してある。 これが私に社長が協力してくれる理由だ。 妹の無念を晴らすため、妹の日記と、留守電に残っていた音声を使った作ったエサにひっかかり、勝手に死んだあいつ…もちろん警察や、今さっき会見で公開した音声はあけみの部分だけは別音声に差し替えてある。 そもそもIVer Name(アイバーネーム) あけみなんて存在はいない。 次のターゲットは、妹を穢したあの社長だ。すでに会見で社長がポロリと漏らした言葉に、ネットユーザーは特定を進めるだろう。いざとなれば私がヒントを書きこんでおけば… 「おう正樹。早速ミリバーストルカンパニーの伊藤から、早急に担当者に会いたいと電話が入ってるぞ」 再び顔を出した琢磨社長からそう聞き、もはや罠を仕掛けることすら不要であることに頬がゆるむ。 どう抹殺してやればいいのか… 頭の中に押し込めていた殺害計画を彼是考えながら、「明日にでもと伝えてください」と返答しておいた。 妹の無念を晴らす。 その一念でここまで来たのだから…
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