そういえば雑誌に載ったんだった

コージの辛抱強い見守りもあって、ナナミは少しずつ回復した。
前と同じではない。
だけど、前と同じように日常を過ごせるようになった。

「立ち直った」とか「立ち直ってない」というのは主観の問題で、目には見えない。
いくらナナミが「もう大丈夫」と言っても、周りには分からない。

ナナミは吹っ切れた物理的な証拠として、引っ越しをしたいと思った。
コージも賛成した。

ナナミにはお姉ちゃんがいて、コージには弟がいる。
子どもが２人いる家庭に育ったナナミとコージは、なんとなく子どもは２人と考えていた。

結婚して家を決める時、子ども部屋を二部屋とれる間取りにした。
子育てしやすいと人気で、評判の良い小学校がある学区に住んだ。
食器を買う時は、いつも4人分買った。

これからも２人で暮らすなら、こんな広い家はいらない。
近くに公園なんかなくても、駅に近い方が便利。
食器を減らせば、狭い家でも大丈夫。
暮らしはコンパクトな方が、コージ1人の稼ぎでもやっていきやすい。
こうして2人は、もっと小さな家に引っ越すことにした。