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【31】涙色の意味
それから桐生と桜庭は毎日のように会っていた。
ちょっと遠出して遊びに行ったり勉強したり。
その内、桜庭の父親が夏休みになり、一家で旅行に行くことになった。
それから帰って来ると、桐生に「母さんが出張でいないんだ。姉ちゃんも友達んちに泊まりに行くって言うし、一泊で泊まりに来ない?」と言われた。
桜庭は直ぐに「行く」と返事をしたが、泊まるってそういうことだよな…と思った。
桐生との楽しい夏休みを思い出す。
スマホに詰まった思い出を見返す。
此処まできて、何を躊躇うことがある?
俺は駿くんの恋人なんだから、自然なことなんだ…
ふと瀬名を思い出して桜庭は頭を振った。
桜庭のスマホにはもう瀬名との画像は一枚も無かった。
大島達と一緒に写っていても、あの誕生日プレゼントの事以来、全てパソコンに保存した。
けれど消去することは出来なかった。
見ることも無い。
桜庭は一応友達だったし、大島達も写っているし、消去することも無いんだと自分を納得させていた。
それにいつだって消そうと思えば消せるんだから…
ハルと俺はもう友達でも何でも無い
桜庭は一時でも瀬名を思い出した自分に腹が立った。
そうして桐生の家に泊まる日がやって来た。
昼食を済ませて桐生の家に行くと、桐生は嬉しそうに桜庭の手を引いて二階の自室へと向かう。
部屋のテーブルにお菓子がどっさり置いてあって桜庭は笑った。
「こんなに買ったの?」
「何たって食いしん坊莉緒と二日間一緒だから」
「駿くん!」
桜庭は桐生の背中を叩こうとして、勉強机に目が留まった。
メリーゴーランドの前でキスしている写真が綺麗なフォトフレームに飾られていた。
「わざわざプリントしてくれたんだ…」
そう呟く桜庭に、桐生は照れ臭そうに言った。
「それ、ホント良く撮れてるよな。
いつでも見ていたくてさ…恥ずかしかったけど姉ちゃんに写真見せて、それに合う写真立て一緒に選んで貰ったんだ。
姉ちゃん、莉緒のこと、かわいい女の子ねーなんて言って…」
「駿くん…!」
桜庭が桐生の背中にしがみつく。
桐生が桜庭の手に自分の手を重ねた。
「莉緒が泊まりに来てくれるって言ってくれて本当に嬉しかったんだ。
今回は勉強は無しで楽しもうぜ」
「うん!」
桜庭は重なった手を握り返した。
それからはDVDを観たり、テレビゲームをして過ごした。
桜庭はそれほどゲームは得意では無いが、桐生はもっと苦手らしく桜庭は爆笑した。
「駿くん、運動神経も動体視力も良いのに何でパーティーゲームが出来ないの?」
「何か…俺の動きとリモコンにズレがあんだよ!」
「なにそれ!」
夕食はデリバリーのピザにした。
それから交互に風呂に入った。
桜庭が風呂から上がると、先に風呂に入った桐生が部屋にいて、桜庭に冷えたミネラルウォーターを持って来てくれた。
桐生はベッドに座って、やはりミネラルウォーターを飲んでいる。
桜庭はカーペットに座り、クッションに凭れていた。
二人とも何も話さない。
暫くすると桐生が「莉緒」と呟いた。
桜庭はペットボトルをテーブルに置くと、桐生の前まで行った。
「莉緒を抱きたい。
いい?」
桐生らしい率直な口振りに、思わず桜庭は笑みが零れた。
「うん…いいよ」
桜庭が答えると、もう桜庭はベッドに横にされていた。
桐生が桜庭のパジャマを脱がす。
桜庭が裸になると、桐生も素早くパジャマを脱ぎ捨てた。
「莉緒…」
桐生は桜庭の顔中にキスを落とすと、唇に深いキスをする。
「ふ…は…ぁ…」
桜庭が酸素を求めて微かな声を上げても、それすら許さないというように桐生のキスは激しい。
唾液が唇から零れる。
下半身に熱が集まる。
桐生が唇を離して、耳を愛撫し始めると、桜庭自身はもう緩く頭をもたげていた。
桐生の指が、桜庭の胸の突起を摘む。
「ああっ…」
桜庭が白い喉を反らす。
すかさず桐生が首筋に舌を這わす。
桐生はゆっくりと桜庭を味わうように、桜庭の身体を蹂躙していく。
胸の突起を舐められて、チュウッと吸われると桜庭の身体が震えた。
桐生が桜庭自身に触れる。
「濡れてる…」
桜庭はその一言に真っ赤になった。
「だって…だって…」
「莉緒は敏感なんだ?」
「そんなの…知らない…っ」
桐生はクスッと笑って、また胸の突起に唇を這わす。
舐められ、強弱を付けて吸われて、カリッと噛まれると桜庭は「ああんっ…いい…」と声を上げた。
「痛いのがいいの?」
「ちが…ちがう…」
「莉緒、足広げて」
「う、ん…」
桜庭が足を左右に広げると、後孔にヌルッとした感触が広がった。
ツプっと一本指が差し込まれる。
「あっ…ああっ…」
指は内壁をウネウネと進む。
そしてある一点に触れた時、桜庭の身体が跳ねた。
「アアッー」
「気持ち良い?」
桐生が指に力を込めて擦る。
「ああっ、い、いっ…や…しゅ、く…」
その時、桐生が桜庭の雄を咥えた。
「やあっ…だめぇ…!」
桐生はじゅるじゅると桜庭の雄を舐めながら、後孔を解していく。
桜庭は雄への刺激に、指が増やされていくことも意識出来ない。
いつの間にか指が三本に増やされ、中の悦いところばかりを弄られ、桜庭自身を深く咥えられピストンされると、桜庭は涙を零して喘いだ。
「ああんっ、も、だめ…っ、イっちゃう…イっちゃう…」
「いいよ、イきな」
「はああああっ…アアーッ」
桐生の口内に白濁が溢れる。
桐生は桜庭の雄の先をチュッと吸うと、一滴残らず嚥下した。
「はぁ…ああ…」
桜庭が肩で荒く息をしたのも束の間、蕾を肉棒で貫かれた。
「ヒッ…ぁあーっ」
「ごめん」
桐生が桜庭の膝裏を手を突き、激しく抽挿を繰り返す。
パチンパチンと肉のぶつかり合う音がする。
「ああんっ、だめっ、つよ…いっ…」
「莉緒…莉緒…」
「しゅ、…や…いいっ…い…」
桜庭の中で桐生の雄がまた大きくなる。
「やあっ…おっきくしないでぇ…」
「莉緒、が、いいって言う、から…」
桜庭の真っ赤な頬に次々涙が零れ落ちる。
桜庭は我慢出来ずにまた射精した。
前を触られず達したので、凄い快感だった。
そんな中、桐生はまだ激しく奥へ奥へと突き立てる。
「ぁ…ああ…しゅ…」
桜庭は息も絶え絶えに喘ぎ声を漏らすだけだ。
桐生が桜庭の最奥に白濁を放った時も、桜庭は小さく「ぁあ…」と呟いただけだった。
「莉緒…ごめんな」
桐生が桜庭の身体を簡単にひっくり返す。
桜庭は朦朧とした意識の中で、え?と思った。
尻を高く持ち上げられ、腰を固定される。
「我慢出来ない」
散々突かれて柔らかくなっていた蕾は、そう言う桐生の雄を易々と飲み込む。
「アアッ…しゅん、くん…っ」
桐生の激しさは変わらなかった。
まるで尻を叩かれているような勢いで、腰を振られる。
桜庭はシーツに顔を付けながら、揺さぶられ続ける。
前立腺を擦られ続けて、奥に打ち付けられ、桜庭はもう快感に身を任すだけだった。
また、前にも触れられずイってしまう。
桜庭は瀬名とのセックスで必ずイっていいか訊いてからイっていたから、少し罪悪感を覚えた。
だが桐生の刺激にそんな罪悪感も吹っ飛ぶ。
桜庭は涙でシーツを濡らしながら「ゆるして…もう…ゆるして…」と繰り返し呟くだけだった。
桐生がやっと白濁を溢れさせた時も、身体をブルッと震わせただけ。
桐生がそっと桜庭を仰向けにして抱きしめる。
桜庭はまだ、蕾の中が快感で収縮していた。
「好きだ…愛してるよ、莉緒…」
桐生が愛しげに囁く。
桜庭は怠い腕をやっと桐生の首に回す。
「俺は…駿くんのモノ…?」
桐生がふふっと笑う。
「莉緒はモノなんかじゃないよ。
莉緒は莉緒だ。
俺が愛してる莉緒」
桐生が桜庭の唇にチュッとキスをする。
『莉緒ちゃんは俺のモノだよ』と繰り返し繰り返し言った人
その癖、一度も好きだと言ってくれなかった人
もう俺は『駿くんの愛してる莉緒』になったんだ…
「莉緒?」
桜庭は自分でも気付かぬうちに泣いていた。
何の涙かは分からない。
駿くんとひとつになれた嬉しさ?
愛されてる喜び?
それとも…?
「駿くん、『俺のモノだよ』って言ってみて?」
「変な奴だなあ、莉緒は。
そんなことに何拘ってんだよ?」
桐生がキョトンとして訊く。
「お願い」
「しょうがねえな~」
桐生は笑って、桜庭とおでことおでこをくっつける。
「莉緒は俺のモノだよ」
やさしい声だった。
切羽詰まったあの声とは全然違う。
違って当然なんだ…
「これでいいか?」
桐生が照れ臭そうに言って、桜庭の涙を拭う。
「うん。
ありがとう、駿くん」
「どういたしまして。
じゃあ風呂行くか」
桐生が桜庭を抱き上げる。
桜庭は桐生にしがみついて、また溢れてくる涙を隠した。
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