【39】『お助けマン』のメモ

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【39】『お助けマン』のメモ

放課後になり、桐生と桜庭が並んで帰って行くのをそっと影から見送ると、瀬名は桜庭の靴箱を開けた。 小さなメモ。 メモを持って屋上に走る。 いつものお気に入りの貯水槽の脇でメモを広げる。 『お助けマンさんへ。 お久しぶりです! 文化祭、本当に楽しかったです。 俺は今、特に必要な物も、して欲しいことも、困っていることもありません。 ただ、お助けマンさんも忙しいかもしれませんが、たまにメモだけでも貰えると嬉しいです! お助けマンさんは後夜祭に出ましたか? 俺は今、あの時瀬名くんが弾いた『ロミオとジュリエット』のピアノバージョンを練習しています。 お助けマンさんは誰にも言わないと思いますが、桐生くんにも内緒にしているので秘密にして下さい。 お助けマンさんは楽器はやりますか?』 瀬名のメモを持つ手が震える。 『たまにメモだけでも貰えると嬉しいです!』 『瀬名くんが弾いた『ロミオとジュリエット』のピアノバージョンを練習しています。』 「莉緒ちゃん…どうして…」 瀬名の瞳から涙が零れる。 どうして どうして どうして 俺はこんなに莉緒ちゃんが好きなんだろう 桐生くんに内緒で練習している莉緒ちゃん 桐生くんを驚かすため? それとも…? 今朝、桐生くんにメモを見せるように迫られていた… それでも必死にメモを見せないでくれた… だけど桐生くんは本気だ メモを見せない莉緒ちゃんを土日で説得する気だ… 莉緒ちゃん… どうか桐生くんが諦めてくれますように… 「いや…も…触らないでぇ……」 桜庭はベッドの壁にクッションを背に両足を開いていた。 桜庭自身から溢れた白濁と桐生が使ったジェルで蕾までぐしょぐしょで、シーツまで濡らしている。 桐生の指が三本、桜庭の蕾の中を蹂躙している。 桜庭はもう三度白濁を放っていた。 桜庭は真っ赤な頬に涙を零して懇願していた。 土曜日。 桜庭は午後1時に桐生の家に行った。 桐生の家は母親だけで、ピアノ講師をしている。 土日も仕事だ。 桐生の大学生の姉も留守だった。 桜庭はいつものように、桐生に手を引かれて桐生の部屋に入った。 桐生が部屋に鍵を掛ける音がする。 誰もいないのに…? 桜庭が不思議に思っていると、桐生が「脱いで」と一言言った。 桜庭は思わず「え?」と訊き返した。 部屋に入るなりセックスするなんて、今まで一度も無かったからだ。 それにいつも桐生が服を脱がしてくれていたから。 「全部脱いで。早く」 桐生はそう言いながら、自分もどんどん洋服を脱ぎ去っていく。 桜庭は仕方無く、自分も裸になった。 桐生がベッドの壁沿いにクッションを並べる。 「莉緒、そこに凭れて足開いて」 桜庭はおずおずとベッドに上がった。 クッションに凭れて、少し足を開く。 桐生が指にジェルを塗る音がやけに耳につく。 桐生がぐいっと桜庭の両足を開いた。 それから桐生は執拗に蕾を探った。 桜庭がイきそうになると指を休める。 桜庭の身体から快感が徐々に引いていくのを見計らって、また指を動かし始める。 そうして時間を掛けるだけ掛けて、後ろだけで三度絶頂に導かれた。 桜庭は挿れられてもいないのに、もうクタクタだった。 桐生が愛撫を始めて何時間経ったかも分からない。 それでもまだ桐生は指でイかそうとする。 「しゅんく…やぁ…も、むり…」 「ダ~メ。そうだな。 あと1回イったら終わりにしてもいいよ」 桐生が綺麗な笑顔で言う。 「なんで…ぁあ…なん、で…こんな…」 「莉緒をドロドロにしたい。 何でも言うこときくんだろ?」 桐生が前立腺を強く擦る。 「あっ…アアッー」 「ほら、イけよ」 ぐちゅぐちゅと卑猥な音が静かな部屋に響く。 「やあああっ…!イくっ…イくぅ…!」 桜庭の身体がビクビクとしなる。 ピュッと少量の液体が雄から飛んだ。 桐生がつまらなそうに「まだ出るんだ」と呟いた。 桜庭は泣きながら、「も、いいでしょ…?抜いて…」と震える手で桐生の腕を掴む。 桐生がゆっくり全ての指を引き抜く。 桜庭は「ああっ…」と悲鳴ともつかない吐息を漏らした。 桐生は全く気にする様子もなく、「風呂行こうか」と桜庭をさっと抱き上げた。 浴室には見慣れ無い白いマットが床に引かれていた。 「これなら莉緒の身体も痛く無いだろ?」 桜庭は何をされるのかと、回らない頭でボンヤリ思った。 桐生はシャワーでざっと桜庭の汚れた身体を流すと、自分はバスチェアに座って言った。 「舐めて」 そういえば、桐生は一度も達して無いんだと気付いて、桜庭はマットに跪いた。 ただ、バスチェアが低いので、マットの上に這うようになる。 それでも桐生自身を咥えた。 桐生に教えられた通り、丁寧に茎に舌を這わせ、先を舐めて吸う。 体勢のせいで自然と腰が上がる。 桐生の手が桜庭の尻たぶを揉む。 「んっ…んん…」 そちらに気を取られていると、頭をぐっと押さえつけられた。 雄が喉の奥に当たる。 桜庭は思わずえずきそうになった。 「そのまま舌を使いながら、ピストンして」 桜庭は涙を滲ませながら、必死に口をすぼめて上下に動かした。 「ああ…いいよ…莉緒…」 桐生の雄が桜庭の小さな口の中で一際大きくなり、ピクピクと震える。 桜庭は桐生の絶頂が近いと思い、血管の浮き出た雄を激しく吸った。 すると「莉緒、口離せ」と言われた。 いつも全て飲み込んでいるので、桜庭は戸惑ったが取り合えず口を離した。 桐生が「く…」と呻いて、目の前で雄を数回自分で扱いている。 「駿くん…?」 桜庭がキョトンとしていると、「莉緒、目、瞑れ」と桐生の余裕の無い声がした。 桜庭が訳も分からず目を瞑った瞬間、熱い何かが顔に掛かった。 それはトロトロと額から頬まで濡れて垂れていく。 桜庭はそっと瞳を開けた。 「これ…?」 桜庭は唇に垂れた液体を触ろうとして、桐生に手を掴まれた。 「口の周りを舐めて取れよ」 「え…」 「早く」 桜庭は言われた通り、舌で唇を舐めた。 直ぐに精液だと分かった。 「駿くん…何で…」 「何でもするんだろ? 早く舐めろよ。 垂れちまう」 桜庭はゆっくり口の周りを舐めた。 「かわいい。かわいいよ、莉緒。 ほら、見てみろ」 抱き起こされて鏡の前に連れて行かれる。 白濁で汚れた自分の顔が見えた。 桜庭の瞳に涙が浮かぶ。 こんなことをされるくらいなら、飲まされた方が良かったと思った。 桐生の精液を飲むことは嫌じゃない。 自分もされて嬉しいからだ。 愛情を感じる。 気持ちが良い。 それを桐生も感じてくれているのかと思うと、逆に嬉しい。 でも、これは違う…。 「駿くん…シャワー貸して」 「駄目だ」 「え…?」 「莉緒は何度イった? 俺、まだ一度だよ? また舐めてよ」 「駿くん…」 桜庭の瞳から涙が零れて落ちる。 「顔、流したい」 「駄目だ」 「…っ…どうして…?」 「そのまま咥えるんだよ」 桐生が桜庭を鏡の前からマットへといざなう。 「また顔射するんだから、流しても無駄だろ?」 「駿くん…」 桐生がバスチェアに座る。 「それとも…」 桐生が涙に濡れた桜庭の瞳を見る。 「『お助けマン』のメモ、見せてくれる?」 桜庭は黙って桐生の足の間に跪いた。 それからまたフェラをして顔に白濁をかけられた。 桐生は今度も顔を洗うのを許してくれなかった。 次は、そのままマットの上でバックから貫かれた。 部屋でそれこそドロドロになるまで解されていた蕾は、易々と桐生の太い杭を飲み込んだ。 桜庭はもう感じ過ぎて何が何だか分からず、桐生に揺さぶられるだけだった。 「あ…ぁあ…あ、う…」 小さな喘ぎ声を上げるだけ。 それでも「イくっ…イっちゃ…う」と言って絶頂を迎える。 「イけよ」 桐生の言葉に「アアッ…!」と言って達した。 が、何も出ない。 と同時にもの凄い快感が身体を駆け抜けた。 「アッ…あああああっ」 桜庭の身体が仰け反り、震える。 「莉緒、ドライでイったな」 嬉しそうな桐生の声が聞こえる。 桐生が一層激しく突き立てる。 「やだっ…しゅ、くんっ、今、やめてっ」 ドライで達した身体に抽挿の刺激が強すぎて、桜庭は悲鳴を上げた。 桐生は止めようとする気配すら無い。 桜庭の尻に指を食い込ませて、激しく腰を振る。 パンパンと肌のぶつかり合う音が桜庭の耳に遠くに聞こえた。 桜庭はそのまま意識を無くした。 それから桐生は甲斐甲斐しく桜庭の世話をしてくれた。 桜庭が目覚めた時は、顔も身体も綺麗だったし、夕食に手作りのチャーハンを作ってくれた。 夕食を食べ終わると、「きちんと洗えてないから」と言って、身体の動かない桜庭を抱いてまた浴室に連れて行き、全身を洗ってくれて、髪まで乾かしてくれた。 それからテレビを観たりしてゆっくり過ごした。 いつもの桐生に戻ってくれた…と、桜庭は嬉しくて、「疲れただろ?もう寝ようか?」と腕枕をしてくれる桐生の胸に飛び込んだ。 桐生が桜庭をやさしく抱いて照明をリモコンで消す。 桜庭は桐生にぴったり寄り添い、瞳を閉じる。 その時。 「明日はメモを見せる気になるよ」と桐生が囁いた。 桜庭はパッと瞳を開けた。 「しゅんくん…」 桜庭の声は震えていた。 「おやすみ、莉緒」 桐生が桜庭の頭の天辺にキスをする。 『あなたが 今、一番必要な物は何ですか? 今、一番して欲しいことは何ですか? 困っていることはありませんか? どうか教えて下さい』 桜庭の暗闇しか映らない瞳に『お助けマン』のメモが浮かんだ。
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