【41】電話

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【41】電話

桜庭は桐生が達することなどお構い無しに、何度も何度もドライでイった。 苦しい位の快感が続く。 「ああんっ…いいっ…もっと…もっとぉ…」 それでも貪欲に桐生に強請り続ける。 桐生はたまに意地悪く動きを止める。 桜庭はその度、狂ったように桐生を求める。 「莉緒は本当に淫乱だな」 「いんらん…」 「莉緒は淫乱ですって言ってみろ」 「りおはっ…淫乱ですっ…」 「動いて欲しい?」 「してっ…して…しゅんくんっ…」 桐生がまた抜き差しを再開する。 桐生が動きを止めて言えと言えば、桜庭はどんなに恥ずかしい言葉でも言った。 ただ「メモを見せる?」と言う言葉にだけは頷かない。 桜庭の雄は血管が浮き上がり、いつもの綺麗なピンク色から、赤く腫れ上がっていた。 桐生は最奥目掛けて激しく突くだけでなく、そんなギチギチの桜庭の雄も扱く。 桜庭が「アアーッ…死ぬ…死んじゃう…っ」と悲鳴を上げながら、魚のように全身をピクピク跳ねらせる。 そんな最中、マナーモードでスマホが振動した。 桐生は桜庭を攻めながら、チラッとテーブルの上のスマホを見た。 桜庭のスマホにランプが点いて震えている。 桐生がズルリと自身を桜庭の蕾から抜く。 「しゅんくん…いやっ…」 「ちょっと待てって」 桐生は桜庭のスマホを掴んだ。 『公衆電話』と表示されている。 桐生は通話をフリックした。 「はい」 相手は何も言わない。 桐生が口を開く。 「よう『お助けマン』。 もうメモじゃ我慢出来なくなったのか?」 『……』 「良いものを聞かせてやるよ。 お前の大好きな莉緒の声」 桐生はスマホを持ったまま、ベッドに戻る。 「しゅんくん…はやく…」 「早く何?」 「挿れて…挿れてぇ…」 「仕方無いなあ」 桐生がスブッと肉棒を蕾にねじ込む。 だが、動かない。 桜庭が瞳を見開く。 「しゅんくん…どうして…」 「莉緒って何でそんなに欲しがるんだよ?」 「淫乱だからぁ…莉緒は淫乱の変態だからぁ…ね、もう、良いでしょ? 動いて…動いてぇ…」 「メモを見せる?」 「いや…それはいや…」 「頑固だな」 桐生は笑って、ガンガンと突き出す。 「いいっ…して…して…もっとぉ…!」 「莉緒、ぺニスからブレスレット取ってやろうか?」 「しゅんくん…!」 「その前にもう一回イけ」 「アアアーッ…死んじゃう…!」 桐生はスマホをベッドに放った。 『お助けマン』は公衆電話の下にうずくまっていた。 あれは普通の桜庭じゃないと直ぐに分かった。 桐生に普通じゃないことをされている。 まずプライドの高い桜庭がいくらセックス中とはいえ、自分を『淫乱』だの『変態』だの言う筈は無い。 それに我を忘れたような強請り方。 自分とセックスしていた時にだって、あんな強請り方は只の一度も聞いたことは無かった。 『莉緒、ぺニスからブレスレット取ってやろうか?』 あの一言だって、普通のことをしているんじゃ無いと分かる。 それなのに。 そんな状態なのに。 メモを見せることは拒んでた…。 莉緒ちゃん… いいんだ もう、いいよ メモくらい、桐生くんに見せなよ 莉緒ちゃんが犠牲になってまで隠す価値なんて無いんだよ、あんなメモ 瀬名はスマホを取り出すと、大島に電話を掛けた。 桐生が桜庭の雄から根元を締め付けていたブレスレットを解いてやっても、白濁は勢い良く飛び出すどころか、トロトロと零れるだけだ。 根元には縛られた跡が残っている。 桐生はゆっくりと緩急をつけながら、桜庭自身を扱いてやった。 その度に、少しずつだが白濁は溢れ出る。 桜庭は「ああん…ぁあ…っ…」と小さく呻いている。 だんだん桜庭の雄が萎えてきて、全部出きったところで桐生は手を離し、自分も桜庭の蕾から自身を引き抜いた。 桜庭はビクッと身体を震わせるだけだ。 それから手首と足首の戒めも解いた。 桐生の予想通り手首と足首には跡は付いていない。 桜庭は気を失ってるようで、そのままの体勢で動かない。 桐生は桜庭の足を閉じてタオルケットを掛けてやった。 それから自分のゴムを外し後始末する。 そうして掛け時計を見る。 そろそろタブレットの効き目が切れる時間だ。 目覚めた桜庭はキョトンとして、普段着でベッドに凭れて雑誌を読んでいる桐生を見た。 「駿くん…?」 「起きた?」 桐生が笑って振り返る。 「あれ…?俺…?」 「まず風呂行くか?」 桜庭は不思議そうに桐生を見上げる。 「俺…駿くんとセックスしたよね? あの…また…し、縛られたよね…?」 「うん。ごめんな、縛ったりして。 俺も意地になっちゃってさ…」 「あ、あの…セックス…あんまりっていうか殆ど覚えて無いんだけど…」 桜庭は恥ずかしそうに赤くなって言う。 それこそ桐生の予想通りだった。 あのタブレットを勧めてくれた医師も笑って言っていた。 『あんまり激しくすると、初心者だとセックス中の意識飛んじゃうぞ』 一転、桜庭が心配そうな顔になる。 「…俺、メモのこと、何か言った?」 「見せないって言ってたよ」 桐生がやさしく桜庭の頭を撫でる。 「じゃあ…!」 桜庭の顔がパッと明るくなる。 「俺の負け。 もうメモを見せろなんて言わないから 『お助けマン』のやることにも口出ししない」 「駿くん!」 桜庭が桐生に抱きつこうとして、手を伸ばす。 桐生が逆に桜庭を抱きしめた。 桐生はまた昨日のように、身体の動かない桜庭を風呂に入れてやり、髪も乾かしてやった。 それから桐生の姉がバイトから帰って来て、三人でデリバリーのイタメシを食べた。 桐生が姉に、桜庭を車で家まで送ってやって欲しいと頼むと、「別に良いけど。駿一、ひとつ貸しだからね」と笑って引き受けてくれた。 桐生が桜庭を支えて三人で笑いながら、家のガレージから車に乗り込む。 桐生と桜庭はバックシートに並んで座った。 車が発車して、桐生の家を後にする。 車が見えなくなって、瀬名は自分の目を疑った。 桐生と桜庭はいつもと変わらない。 瀬名は大島に桐生の家の住所を聞いて、待っていたのだ。 桜庭が一人、飛び出して来るところを。 あんなことをされて、怒るか、泣くかして、出てくるところを。 それで、桜庭を家まで送っていくか、声を掛けられなくても帰宅するまで見守るつもりだった。 「嘘だ…何で…」 瀬名はその場に立ち尽くした。 桜庭は帰宅するとパジャマに着替えてベッドに直行した。 身体が怠くて怠くて動けない。 後孔にも少し違和感があった。 習慣でラインのトークをチェックしても、返事をする気にすらなれない。 桜庭はスマホを充電器に差し込むと、部屋を暗くして目を閉じた。 この二日間。 桐生らしくなく酷いことをされたと思う。 けれど桐生を嫌いになったり、ましてや憎むような気持ちには全然なれなかった。 桐生は桜庭を散々攻めた後、絶妙にフォローを入れる。 攻められてる時は苦しくても、それが嬉しくて今までされたことが気にならなくなる。 それに桐生は本心であんなことをやったんじゃ無いと思える。 自分が『お助けマン』のメモを見せないから…。 桐生も意地になってごめん、と謝ってくれた。 そして。 『俺の負け。 もうメモを見せろなんて言わないから。 『お助けマン』のやることにも口出ししない』 とやさしく頭を撫でて潔く言ってくれた。 やっぱり駿くんは駿くん… 桜庭は桐生の笑顔を思い出しながら、眠りに落ちた。 桜庭は翌日も怠くて、珍しく寝坊してしまった。 焦っていつも桐生と待ち合わせる桜庭の家の最寄り駅のホームに向かう。 桐生は桜庭の顔を見るとホッとしたように笑った。 「良かった。 心配したよ。 今、電話しようかと思ってたとこ」 「ごめんね!」 「大丈夫。 今ならまだ遅刻しないから」 桜庭と桐生は丁度やって来た電車に乗り込んだ。 桜庭が靴箱を開けると、いつも上履きの上に置かれている小さなメモが、さらに小さく畳まれて上履きの横に置かれていた。 桜庭は上履きを履くと、その小さな小さなメモを手に取った。 「莉緒、早く!」 桐生に急かされて、桜庭はそのメモを制服のジャケットのポケットに入れた。 桜庭は眠くて怠くて、やっと授業を受けていた。 2限が終わると、桐生が言った。 「莉緒、次の体育は無理だろ? 昼休みまで保健室で休んでくれば?」 桜庭は授業を休むのは嫌だったが、確かに今の自分では体育は無理だ。 桜庭は「そうする」と言って、保健委員のクラスメートに声を掛けた。 保健委員の生徒は保健室まで付いて行くと言ってくれたが、体育の着替えもあるので、桜庭は「大丈夫だから」と言って、一人で保健室に行った。 校医の堂山は桜庭を見るなり、「ちょっと顔色が悪いな」と言って体温計を桜庭に渡した。 熱を計ると36.8℃。 堂山は「微妙だな~。少しベッドで寝ていけ」と言ってくれた。 桜庭は制服のジャケットを脱いで、ベッドに横になろうとした時、メモのことを思い出した。 ポケットからメモを取り出し、ベッドに潜り込む。 ベッドの中で小さく折り畳まれたメモを開いた。 見慣れた妙に角ばった文字。 『今日から冬服になりましたね。 俺はギターをやります。 それより、俺のメモのせいで、あなたは困っていませんか? 辛い目にあっていませんか? 心配しています』 「『お助けマン』…」 その時、なぜだか涙が浮かんで零れて落ちた。 『辛い目にあっていませんか?』 辛い目… 駿くんが嫌いになった訳じゃない 駿くんがわざと俺を苦しめようとしたんじゃ無いって分かってる でも 確かに土日は辛かった… 駿くんはやさしかったけど… 辛いか、辛くないかと問われれば辛かった… 『お助けマン』… 桜庭はメモをシャツの胸ポケットに入れると、吸い込まれるように眠った。
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