【42】決意

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【42】決意

結局、桜庭は昼休みまでぐっすり眠ってしまった。 目を開けると、桐生が心配そうにベッドの脇の椅子に座っていた。 「駿くん…?」 「目が覚めた? 気分はどう? もしメシが食えそうなら、ここで食べちゃおうぜ。 先生に許可は貰ったから」 桐生は桜庭の通学バッグを持ち上げて見せて笑った。 「ありがと。 じゃあ食べる!」 「そっか! 実は俺も弁当持って来たんだ。 一緒に食べよう」 桐生は悪戯っぽくまた笑う。 その笑顔。 やっぱり俺は駿くんが好きだ… 桜庭も笑って通学バッグを受け取った。 それでも少しは楽になったが、午後の授業も身体が怠くて桜庭は早く家に帰りたかった。 桐生もHRが終わると、「今日は莉緒は真っ直ぐ帰れよ」と言ってくれた。 二人で昇降口を出て学校を後にする。 それから少しして、瀬名は桜庭の靴箱を開けた。 小さなメモを取り出して、屋上に走る。 そしていつもの貯水槽の陰でメモを開く。 『お助けマンさんへ。 お助けマンさんはギターを弾くんですね! いつか聴けるといいな。 困ったことは解決しました。 桐生くんがお助けマンさんのメモを見たがっていましたが、土日で分かってくれました。 もうメモも見せろとも言わないし、お助けマンさんのすることに口出ししないと約束してくれました。 その時、ちょっと辛かったけど、俺は大丈夫です! これからもよろしく!』 瀬名はぐっとメモを握った。 『その時、ちょっと辛かったけど、俺は大丈夫です!』 やっぱり… 何かされたんだ、桐生くんに 『辛い』ことを… それでも莉緒ちゃんは桐生くんを許してる なぜだか分からないけど… それでも… 瀬名はいつも桜庭に使っているメモ帳を、通学バッグから取り出した。 翌日、桜庭の身体は大分マシになった。 寝坊もしなかったし、桐生と普段通りの時間に登校する。 今日は『お助けマン』からのメモは無かった。 1時限目が終わった休み時間、桐生が急に笑い出して、桜庭と綾野と谷川は呆気に取られた。 「桐生、どうしたんだよ?」 谷川が興味津々と言った顔で、桐生を見る。 桐生は制服のジャケットの胸ポケットに何か入れながら、まだ笑って言った。 「宣戦布告された」 「宣戦布告? お前に? まさか、喧嘩でかよ?」 綾野が驚いた声を上げる。 「そう。 サシで勝負しても良いってさ」 「馬鹿だな~そいつ! 桐生のこと良く知らない下級生とか?」 そう言う谷川に、桐生は笑いながら首を横に振る。 「俺のこと、物凄く良く知ってるヤツ」 すると桐生がポンポンと桜庭の頭を叩いた。 「駿くん? 危ないことは…」 「莉緒くん、心配ねえよ。 コイツ相手なら熊も避けて通るから!」 谷川があははと笑う。 「俺は動物かよ!」 桐生が谷川の頭にチョップする。 「勝負する時は絶対言えよ? 俺達、見に行くから!」 綾野も笑って言う。 「命知らずのヤツの顔、見てみたいしさ」 「そうだな…」 桐生は桜庭の顔を見て言った。 「三人で見に来いよ」 その日は、桐生の格闘技の練習と桜庭のピアノのレッスンが重なった日だったので、放課後二人はカフェで軽く食事をして別れた。 桐生は道場のロッカーで練習着に着替えようとして、制服のジャケットの胸ポケットから小さなメモを取り出した。 妙に角ばった文字。 『桐生くんへ。 俺のやることが本当は気に入らないなら、そう返事を下さい。 桜庭くんを困らせたり、辛い目に遭わせるようなことは、絶対しないで下さい。 今度、桜庭くんを少しでも辛い目に遭わせたら、俺は桐生くんを許しません。 桐生くんにも、それ相当の辛い目に遭ってもらいます。 桐生くんが勝負しろと言うなら、します。 お助けマンより』 桐生はフッと笑うとまたメモを畳んで、制服のジャケットの胸ポケットに仕舞った。 翌日も桜庭に『お助けマン』からのメモは無かった。 『お助けマン』は結構忙しい人なのかもしれないな、と桜庭は思った。 桜庭は昨日の夜、ラインで桐生に家でデートしようと誘われていた。 桜庭は行くと答えたが、少し緊張していた。 まさか土日みたいなことは無いと思うけど…。 桜庭は首を振る。 あれは『お助けマン』のメモの件があったから 駿くんはそんな人じゃない… 放課後、桐生の家に行く。 途中、コンビニで二人で選んで買ったお菓子を食べながら、桜庭の好きなアーティストのDVDを見たりして、他愛のないお喋りをして楽しく過ごす。 1時間もすると、桐生が桜庭の唇にキスしてきた。 深いキスを交わしながら、制服を脱がされる。 桐生の唇が段々と下に下がっていく。 桐生は胸の突起を舌で愛撫しながら、桜庭の後孔を解していく。 「あっ…ああんっ…いい…しゅんくん…」 桐生が桜庭の後孔から指を抜くと、桜庭の雄を咥える。 土日とは比べものにならないやさしい行為。 「は、ぁ…イっちゃう…」 桜庭も甘い吐息を漏らす。 「じゃあゴムつけるか」 桐生が丁寧に桜庭自身にゴムを着けてくれる。 その時。 桜庭は何となく蕾の中が熱いなと思った。 それにむず痒い。 まさか、と思った。 「駿くん…」 桜庭の声が震える。 「ん?どうした? 今度は俺の舐めてくれる?」 桐生は至って普通に微笑んでいる。 「う、うん」 桜庭は桐生の雄を咥えた。 だが、5分も続けられなかった。 蕾の中がカーッと熱くなり、むず痒くて堪らない。 「しゅんくんっ…まさか、また…」 「ごめんな、莉緒。 今日はどうしても必要だったんだよ。 その代わり莉緒の好きなだけイっていいし、好きなだけ抱いてやる」 「やだぁっ…ああっ…こんなの…アーッ」 桜庭が自然に足を左右に開き、腰を揺らす。 桐生は自分もゴムを着けると、桜庭の蕾を猛った肉棒で貫いた。 「ああんっ…いいっ…してっ…してぇ…」 それから30分もすると、桜庭はもう桐生に抜き差しされることしか考えられなくなっていた。 気持ちが良くて桐生に強請ることしか出来ない。 もう既に一度達していた。 「はああっ…突いて、おく、おっきいの…突いてぇ…」 桐生は桜庭の言う通りにしてやる。 そろそろだな、と桐生が思った時、ベッドサイドにあらかじめ置いておいた桐生のスマホが振動した。 「いいか、莉緒」 桐生が雄を穿ちながら言う。 「これからは俺の質問だけに答えるんだ。 おねだりは無しだ。 もし質問以外のことを言ったら、俺はもう動かない。抜く」 桜庭は真っ赤な顔に涙を零しながら、コクコク頷く。 桐生はスマホを取るとディスプレイを見る。 『公衆電話』 通話をタップする。 「『お助けマン』。良く聞けよ」 桐生が桜庭を突きながら言う。 「莉緒は困ってることある?」 「あっ…な、無いっ…」 「俺と居て、辛い?」 「つ、辛いって何で…?ぁあ…辛く無い…っ…」 「『お助けマン』が今来たらどうする?」 「お助け…?やだぁ…いやっ…」 桐生はスマホに向かって言った。 「だとさ、分かったか?」 桐生がぐっと蕾の奥を抉る。 桜庭は唇を噛んで声を出さないように耐えている。 「勝負とか…する必要も無いんだよ。 笑わせんな」 相手が通話を切ったのが、分かる。 桐生はスマホをベッドサイドに戻した。 「莉緒、良く頑張ったな。 ほら、好きなだけ声出していいよ」 「アアッ…しゅんくん…もっと…もっとぉ…」 桐生が桜庭の膝裏に手を付いて、激しく肉棒を打ち付けた。 瀬名は公衆電話の前で小さなメモを握り潰した。 そして、また開いた。 メモには、『お助けマンへ。莉緒の本音が聞きたかったから、18時に電話して来い。』という言葉と、桐生のスマホの電話番号が書かれていた。 瀬名はこれから後、何かの役に立つかもしれないと思い直し、桐生の番号を自分のスマホに登録した。 あれはセックスの最中だ… 瀬名はゆっくり歩き出す。 それでも莉緒ちゃんは桐生くんの質問に懸命に答えていた 困っていることは無い 桐生くんといても辛く無い けれど、最後の質問は瀬名は気にならなかった。 誰だって恋人とのセックス中に、第三者が来たら嫌だろう。 莉緒ちゃんが困ってなければ、それでいい 莉緒ちゃんが辛く無いなら、それでいい 『毎日、楽しくて幸せです』 莉緒ちゃんが幸せなら、それでいい でも、もしそうじゃないなら… 俺は…本物の『お助けマン』になるよ
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