【44】君だけしかいない

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【44】君だけしかいない

結局体育祭では、桜庭は全員参加の競技以外、出場することは無かった。 綾野と谷川は「桐生の陰謀だな!」と笑った。 そんな中、谷川が捻挫をした。 谷川は「大したこと無いから!」と言ったが、その日は桜庭が荷物を持ち、桐生と綾野が谷川を支えて帰宅した。 体育祭の翌日は学校は代休で、桐生はやはり体育委員と格闘技の練習にスケジュール的に無理があった分、朝から道場に籠ることになっていた。 桜庭も体育祭が終われば今度は中間テストがあるので、家で勉強することにした。 桐生のことが頭に浮かぶ。 平日は中々デートは出来なくても、学校では毎日桐生に会っていたし、忙しい合間を縫って土日の少ない時間でもデートをしていた。 桜庭は物凄い喪失感に襲われた。 体育祭が終わり、部活を引退した神田の誘いも適当に断った。 頭を占めるのは桐生の笑顔。 『莉緒』と自分を呼ぶやさく甘い響き。 今、電話しても繋がらないのは分かっている。 桐生は練習中はスマホを見ることさえしないから。 桜庭は夕食を済ますと、「急用が出来たから」と家を飛び出した。 8時少し前に道場の出入口に着く。 桐生は今日の練習は8時までと言っていたので、桜庭は出入口で待つことにした。 8時を過ぎるとゾロゾロと道場から人が出てくる。 社会人から中学生くらいの子と、人々は様々だ。 格闘技とは無縁そうな桜庭をチラチラ見る人は大勢いた。 その時、「莉緒!」と勢いのある声がして、そちらを向くと、桐生が7~8人の人達と一緒にいた。 「駿くん…」 桐生が桜庭に向かって、一直線に駆け寄って来る。 「どうしたんだよ?急用?」 桜庭は首を横に振る。 「こんな時間に一人で出歩くなよ、頼むから。 心配するだろ」 「まだ8時だよ…?」 「ダ~メ。 莉緒は自分のことが分かって無いんだよ」 桐生が笑って桜庭を抱き寄せる。 桐生はシャワーを浴びて来たのか、爽やかな香りがした。 桜庭はその香りに身を委ねる。 「駿くん…寂しかった…会いたくて…」 桜庭が呟く。 その声が余りに寂しげで甘えていて、その上涙を含んでいて、桜庭は自分でもビックリした。 だが、言葉は止まらない。 「会いたくて…会いたくて…来ちゃった。 ごめんね」 「謝んなよ…」 桐生が困ったように笑う。 会いたくて 会いたくて そう言えば、昔、ハルをそう思って泣いた気がする 昔…もう遠い昔のことに思える… 「俺達、これからメシ食いに行くんだけど、莉緒はどうする? 帰るなら、駅まで送って行くし」 桜庭はハッして桐生を見た。 何でハルなんて思い出したんだろう… 「俺がいて、邪魔じゃない?」 「邪魔ってなんだよ? みんなに紹介するから」 「うん!」 「じゃあ、行くか」 桐生が桜庭の手を引く。 その温もり。 桐生の愛情が伝わってくる。 駿くんしかいない… 桜庭は桐生の綺麗に整った横顔を見ながら思う。 俺の全てを分かって愛してくれるのは、駿くんしかいないんだ… 翌日、桜庭が桐生と一緒に登校して靴箱を開けると、紙袋と小さなメモが入っていた。 メモを開く。 妙に角ばった見慣れた文字。 『体育祭、お疲れ様でした! 谷川くんの怪我に役立てて下さい。 今、本当に困っていることはありませんか? どんな小さなことでもいいです。 困ってることを教えて下さい』 紙袋を開けると、湿布とサポーターが入っていた。 桜庭は驚いた。 今まで桜庭以外の人に、『お助けマン』が差し入れをくれたことなど無かったから。 「久しぶりの差し入れだな」 桐生の声に桜庭が振り返る。 桐生はニコニコと笑っている。 「今回は何?」 「それが…吾朗くんにだって」 桜庭はちょっと戸惑いながら答えた。 「谷川に?」 桐生が笑顔から、驚いた顔になる。 「うん…初めてだよ。 俺以外に差し入れなんて」 桐生はクスッと笑った。 「駿くん?」 「いや、谷川の反応が楽しみだなって思って」 教室で桜庭が『お助けマン』からの差し入れを谷川に紙袋ごと渡そうとすると、谷川は露骨に嫌そうな顔をした。 「えぇー何かこえーよ! 『お助けマン』は俺が怪我したところを見てたってことだろ!?」 「正確に言うと、莉緒くんを見てて、お前はついでに目に入ったんだろ?」 綾野がニヤニヤしながら谷川を見る。 「それだって、こえーよ! 体育祭みたいな時にでも莉緒くんから目を離さないワケ!? マジストーカーじゃん!」 桜庭は紙袋をぎゅっと握った。 その手を桐生の手が包む。 「莉緒、気にすんな。 普通の人の反応なんてこんなもんだよ」 「…普通」 「そう。 気味悪がって普通ってこと」 「莉緒くんには悪いけどさ…」 谷川が言いにくそうに言った。 「それ、受け取れない。 俺、病院にもちゃんと行ってるし。 『お助けマン』に貰う理由も無いし。 返しておいてくれない?」 桜庭は「そうだよね」と精一杯笑って、紙袋を通学バッグにしまった。 桜庭はその日、ピアノのレッスンがあったが、振り替えて貰って桐生の家に行きたいと言った。 桐生は笑って「いいよ」と言ってくれた。 放課後桜庭は、靴箱に小さなメモを入れて、桐生と一緒に帰った。 「あっ…ンァッ…いい…っ」 桜庭は桐生の上で腰を振っていた。 初めての体位だったが、桐生に激しく下から突き上げられ、自分でも悦いところに当たるように身体を動かした。 いつものように桐生の部屋で、今日は桐生の姉が購入したというオーケストラのDVDを観て楽しんでいた。 先に唇にキスしたのは桜庭からだった。 桜庭からすることなんて殆ど無いので、桐生は驚いていた。 キスしながら、慣れない手つきで桐生の制服を脱がそうとする。 桐生は笑って唇を離した。 「どうした? 今日は積極的だな~」 「駿くん…」 「ん?」 「今日はいっぱいいっぱい感じたい…」 「…何かあった?」 桜庭は力無く首を横に振った。 「いいよ」 桐生はやさしく桜庭を抱き寄せる。 「いっぱいいっぱい抱いてやるから…」 桐生は普段より多目のジェルを使って、桜庭の蕾をじっくり解した。 桜庭自身にもベッタリとジェルを塗った。 特に尿道口に刷り込まれ、桜庭は「ああんっ…」と身を捩った。 それからフェラをさせられ、桐生がゴムを着けると、上に乗るように言われた。 桜庭は初めての体位に少し不安だったが、解されてトロトロになっていた蕾は、待ちわびたように肉棒を飲み込んでいった。 桐生は突き上げながら、珍しく桜庭の雄を激しく扱く。 いつもは後ろだけでイかせようとするのに…と思いながらも、前と後ろの刺激に桜庭の些細な疑問は吹っ飛ぶ。 もう気持ち良くてイくことしか考えられない。 「ああっ…しゅ、くん…っ…すごい…いいっ…いい…」 「莉緒の中も凄いよ。 ギュウギュウで食いちぎられそう」 「やあっ…ああんっ…イく…イっちゃう…」 「…あ、ちょっと待て」 『待て』と言う割りに、桐生の腰の動きは激しくなり、尿道口に爪を立てられた。 「アアッ…むりっ…イくぅ…あああーっ」 その瞬間、桐生が桜庭の雄をぐっと手前に曲げた。 桜庭はそれに気付かず、白濁を放った。 桐生の顎の辺りから胸にかけて、白濁は散った。 桜庭がはあはあと息をしながら達した余韻に浸っていると、「莉緒」と低い声がした。 「あ…しゅんくん…?」 「俺、待てって言ったよな? どうすんだよ、これ」 桐生の顔と胸を汚す白濁に桜庭はハッとした。 「ごめ…ごめんなさい…俺…」 「ゴム着けてやろうとしたのに…。 それも我慢出来ないのかよ?」 「…しゅんくん…ごめ、なさい…」 桜庭の瞳に涙が浮かぶ。 その時、桐生が動きを再開した。 「あ…?ああ…しゅんくん…?」 「俺、まだ出して無いから」 「ま、待って…今、イったばっかで…感じ過ぎ、る…アアッ」 それでも突かれると、震えるほど気持ちが良い。 熱を放出した筈の桜庭自身も、直ぐに芯を持ち上げてきた。 「ああっ…うそ…っ…何で…こんな…」 桜庭は信じられない思いで、それでも腰を振ってしまう。 「淫乱」 桐生がクスクス笑う。 「今度こそ我慢しろよ」
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