百合に目覚める季節

2/4
前へ
/4ページ
次へ
こういう事って、想定して起きるものじゃない。 私はノーマルだと思っていた。 でも違った。 偶発的な事故とは言え、唇と唇を重ねたことで、 私は同性に恋をした。 夏休み私は友達と近くの市民プールへ出掛けた。 「あっ、由梨……まだ準備運動……」 「大丈夫、平気だって。だって私達まだ十代じゃん」 「もぉ、怪我しても知らないよ」 私はサッとシャワーを浴びたあと、友人の忠告など無視して水の中へと飛び込んだ。 「冷たっ!?」 温水プールだと聞いていたのに、全然違う。 一瞬にして冷水が私の身体を包み込む。 これは不味いと思った私はすぐさま、プールサイドへと上がろうとした。 それが行けなかった。 体温の下がった足は、素直にいうことを聞いてはくれなかった。 「痛ぅ……」 脹脛に痛みが走り、筋肉が硬直してくるのを感じる。 これはまずい、部活の後の筋肉痛とは比べ物にならない。 足がピンっと固まったままゆう事聞いてはくれない。 これはきっといわゆるコブラ帰りと言う奴に違いない!? 「あぶぅぶぶぶぶ」 (どうしよう、足がつって動けないよ~~) 水上に浮かんで居た筈の私の視界は、いつのまにかユラユラと揺れる水面下へと沈んでいった。 「ごぶっ……だっ………れ…………か」 (私、プールで溺れて死んじゃうんだ) …………。 気が付くと、私の目の前に顔が有った。 そして、瞳が合った。 (近っ、なんで?) 一瞬誰かと思ったが、それは私が良く知っている人物だ。 「ぷぎっ」 「良かったぁ~~由梨死んじゃったかとおもったじゃん」 「ねねっち!?」 親友のねねっちこと、芹沢寧音。 彼女は私が息を吹き返すと、私を救ったヒロインを払い除けると、ギュっと私を抱きしめる。 「うっ……ぐっ……しむ、しむ、しむ」 「あっ、ごめん。あははは、力入り過ぎた」 心配してくれるのは嬉しいが、強く抱き締められたため、もうすぐで私はもう一度お迎えされるところだった。 (なんか一瞬おばあちゃんが見えたような気がする) 「大丈夫か、早川くん?」 「成瀬先輩……」 寡黙で、クールで、優秀で、運動神経抜群の私達の学園の生徒会長、成瀬乙葉。普段は取り巻きに巻に巻かれていて、とても近付くことの出来ない存在。 でも、この事件が起こるまでは……凄い人としか思っていなかったけれども(汗) もし彼女が居なかったら、私はおばあちゃんと一緒に今頃天国で、こたつ布団に座ってお煎餅を食べていたかもしれない。 「ん……どうした? やはりどこか怪我でもしているのか?」 「いえ、だっだだだ、大丈夫です」 「そうか、それは良かった。人工呼吸をした甲斐があったよ」 「じっ、じんっ、じじ、人工呼吸!?」 「はわわわわ」 だっ、だから唇が重なってたのね(汗) 「えっ、由梨」 「どっ、どうした早川っ!?」 私はキュン死して、もう一度おばあちゃんの顔を見た。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加