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航平は、洗面台で顔を洗って、少々年をとった、自分の顔を、しげしげと眺めた。
碧と初めて会った時は、碧が十歳で、航平は二八歳だった。
あの時点で、今の碧よりも十歳も年上だった。
気にしないようにしようと思えば思う程、年の差が気に成った。
先日、碧にベッドが欲しいと言われた。
航平と碧の、二人で使う、大きめのベッドが欲しい…… と。
なんとも、恥ずかしくて、期待と、不安の入り混じる言葉だった。
そんな事を考えて、またボンヤリとしてしまっていたようで、台所からまた碧の声が聞こえた。
「こうちゃーん! 早く! 飯が覚めちゃうよ! 」
「今行く! 」
そう返事をして、慌てて台所に行く。
二人で、向かい合わせで手を合わせて、朝ごはんを食べ始める。
いつもの碧の甘い玉子焼きは、今日も美味しい。
碧はバスを使って、学校へ通っているので、航平よりも早く家を出る。
玄関で、碧を見送った航平は、朝食で使った食器を軽く洗ってから、愛車の小さな車で、大学へ向かった。
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