初恋の憧れと、焦燥の理由

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 その日は、碧が台所に立って、肉じゃがを作った。 碧が、食事の準備をしている間に、航平は風呂へ入り、いつもの浴衣姿で、やってきた。  航平は、肉じゃがの味が、紅子と同じだと言って、懐かしがった。 もりもりと夕食を食べて、並んで皿を洗った。 「こうちゃん、今日、泊っていっていい? 」 「いいよ…… ねぇ、碧君、コッチに引っ越して来たら? 」 耳まで真っ赤にして、航平が皿を洗いながらそう言った。 航平が洗い終わった皿を、受け取って、布巾で拭きながら、碧は、航平の横顔を見つめた。 「それは…… 俺の恋人になってくれるって事? 」 「いや、それは…… 」 「どうして? キスはしていいのに? 」 「キスも、本当はダメだけど」 「じゃぁ、どうして許してくれるの? 」 「それは…… 」 「それは? 」 「…… きもちいいから」 蛇口から流れていく、水の音に負けて、上手く聞き取れないほどの小さな声で、航平が言った。 でも、じっと穴が開きそうなほど、じっと航平を見ていた碧には、伝わった。 「じゃぁ、いいでしょ、恋人になってよ」 「私は、つまらないから、ダメだよ… 」 「もう、また、そんな事…… 」 碧は、航平が手に持っている、洗いかけの皿を下ろすと、手を添えて、航平の手についている、シャボンを洗い流して、水を止めた。 シンクの下にかかっていたタオルで、手を拭く。 そのまま、航平の手を引いて、航平の寝室に向う。 引いたままの布団に、航平を座らせると、向いあって座った。 「俺が、どのくらい興奮してるか教えてあげる」 碧の左手が、航平の右手を引く、戸惑った航平の手に、力が入る。 「いや? 」 「…… いや…… じゃない…… けど…… 」 碧が、自分の股間に航平の手を誘った。 恐る、恐る、といった感じで、航平の手が、碧のソレを包む。 ゆっくりと撫で上げて、そっと形を確かめる。 碧が、びくりと腰を引いた。 「あっ、ごめん…… 」 「いや、もどかしくて…… 」 碧は、そろりと、航平を見上げた。 「俺も、触って良い? 」 「あっ、私のは…… つまらないから」 「そんなことないよ」 碧は、航平の浴衣の合わせから、するりと手をしのばれて、パンツの上から、そっと航平のモノを触った。 フニャリと柔らかいそれは、コロリと碧の手に握られた。 「碧君、やっぱり…… 」 「ううん、興奮するよ」 碧自身は、航平の手の中で、びくりと震えて、硬さを増した。 「…… 本当だ」 航平が、おずおずと碧のソレを確かめるように、撫で上げる。 「はぁっ…… 」 こらえきれない、熱を孕んだ声が漏れる。 航平の身体を、後ろに倒させて、その体にズイッと乗り上げる。 碧は、手探りで探って、パンツの中に手を差し入れた。 「あっ、あおくん、だめっ」 航平が、ずり上がろうとするのを、許さず、グッと引き寄せる。 素肌に手を滑らせて、腰をそろりとなぞり、ペニスを握る 「大丈夫、怖くないよ」 「でも…… 」 「俺、興奮している、わかるよね」 「……あお、く…ん…… 」 「好きな人は、触りたくなるんだよ…… いい? 」 何も言わない航平は、戸惑いながらも、コクリと頷いた。 その仕草だけで、碧は、また一段と硬くなってしまった。 「あおくん…… 」 「うん、ここに居るよ」 航平の耳の、唇を寄せて、囁く。  航平の肩から、体の輪郭をなぞるように、手を這わせ、裾から手を入れて、直に触る。 航平の身体が、びくりと跳ねた。  されるがままに、横たわって、不安そうに、こちらを見上げている顔が、堪らなく可愛らしい。 「かわいい」 そう呟くと、少し安心したようで、ちらりと碧を見上げる。 「こうちゃん、辛かったら、ちゃんとおしえてね」 その言葉に、少し、航平の目が潤んだ。 それから、コクリと一度だけ頷いた。  視線を外さずに、顔を近づける。 じっと唇を見つめると、きちんと察してくれて、目を閉じる。 あこがれ続けたその人に、クチュリと音をたてて、キスをする。 一度離れて、角度を変えて、もう一度口づける。 顎の先から、ベロリと舐めあげる。 驚いた航平は、小さく口を開けて『あっ』と声を漏らした。 空いた唇の間に、舌を差し入れる。  あまり、強引だと、怖がらせてしまうかもしれない。 そう思うと、自分勝手に味わうことが出来なくて、そろりと前歯をなぞるだけにしておく。 「…… こうちゃん、一緒にこすって良い? 」 「え? あっ、擦る? 一緒に? 」  聞いた言葉を、無意識に繰り返す。 (こうちゃんたら、頭いいのに、余裕ないんだろうなぁ)  碧は、一度手を離して、ゆるくなった、航平の腰ひもをほどいた、浴衣から、航平の腕を抜いた。  自分のパーカーも、ズボンも一気に脱いでしまう。 残り一枚になったパンツは、中央が盛り上がって、少しシミが出来ていた。 その姿を、航平がじっと見ているのに気が付いて、顔が赤くなるのを感じた。  航平が、じっと見ているのを意識しながら、パンツをゆっくりと下へ、ずらして見せた。 ブルりと飛び出したペニスに、航平がびくりと肩を震わせた。 そのまま、子供のように尻を付いて、両足を一気に引き抜いた。 航平の視線は、一点に集中して、そこから目が離せないようだった。 「こうちゃん」 声を掛けると、航平は、はっと気が付いて、恐る恐ると言った感じで、碧の顔を見る。 「見えた? 俺の興奮」 「あ? えっ? あの、えっと…… 」 碧は、航平からよく見えるように、舌を出すと、ゆっくりと近づいて、ベロリと航平の乳首を舐めあげた。 それから、そこに吸い付いて、構えていない方の乳首を指でつまんだ。 「あっ、あぁ、そんなとこ、俺、男だし、何も」 そう言いながら、航平は、もぞもぞと体を捻る。 碧に触れられた場所は、全て、敏感になってしまったようで、こらえきれずに、声をあげてしまいそうになる。 「あお…… あお…く…ん」 航平は、碧の頭を、何とか胸から引き離そうと、手を突っ張るが、手のひらもベロリと舐められて、そこもジンジンと痺れた。   肌を撫でまわし、立ちあがったペニスを、航平のソコに、こすりつける。 その刺激に、航平は、声もあげられずに、ハクハクと口を開いた。 航平の、その不慣れな様子に、碧は少し心配になる。 「あおくん…… あつ…… 熱い…… あついよぉ」 一生懸命に訴える、航平の目に、涙の幕が張って、ウルウルと潤んできた。 刺激に耐えかねて、目を瞑ったタイミングで、ポロリと涙が落ちた。 その一粒さえ、もったいない気がして、吸い取った。    目尻にキスをされた航平は、碧の顔を大切そうに、両手で包む。 「あっ、あお…… あおくん…… イって」 「え? 」 航平の言葉を聞き返す。 『イって』の意味を計りかねて、じっと見つめてしまう。 「好きって…… 言って」 泣きながら、熱に浮されたように、そう言う航平を、碧はギュッと抱きしめた。 「好きだよ、大好き。 ごめん、無言で怖かった? 不安にさせた? 」 抱きしめたまま、耳元で話す 「……あおくん、私でいいの? 」 まだ、不安そうに、そう聞かれる。 どうして、伝わらないのだろう、こんなに、何もかも、見せているのに……。 「こうちゃんが、いいんだってばぁ、もうわかってよ、こんなに興奮するんだよ…… 」 わざと、ぐりぐりと股間を押しつけて、高まりを示す。 「ああ……、好きだよ、好き、大好き。 こうちゃんが居てくれたから、うなだれないで。 一生懸命、勉強した。 ここに来るために、こうちゃんの傍に来るために」 航平の手が、碧の背中にまわって、碧がするのと同じように、ギュッと抱きしめた。  抱きしめている航平が、ゴクリと大きく息を飲んだのが聞こえた。 「私は…… 私は、もう、一人になるのは嫌だ、怖いし、寂しい…… 」 航平の声が、細く震えていた。 「だから、今…… 今、碧君を捕まえたら、もう…… できない。 手離してあげられない。 いつか、碧君が、もっと若い、瑞々しい誰かを好きになった時に、みっともなく縋って、焦れて、怒って、泣き叫んで…… 」 それ以上、その話を聞いていることができずに、碧は、航平を抱きしめている手を緩めて、航平と、顔を合わせるように、体を起こした。 碧を抱きしめていた手が、離れてしまって。 不思議そうに、航平が、碧の顔を覗き見た。 「そんな時は来ないよ、絶対に来ない! 」 「でも、碧君、君の人生は、まだまだ長いんだよ……」 まだ何かを言おうとする航平の口を、キスで塞いだ。 逃がさないように、深く、深く、口づける。 キスでたてた、クチュクチュという水音が、静かな部屋に響いた。 息をする間もなく、キスを続けられて、航平は苦しくて、碧の胸を叩いた。 ほんの少しの間、唇が離れて、肩が上下するほど、懸命に酸素を求める、やっと呼吸ができた。 「あお……」 「ダメ! 」 碧を小さく呼んだ、航平の声が、止められる。 「もう、俺の覚悟は、これから先の、態度で示すよ。 『もしも』の話は聞かない! 」 碧は、航平をギュッと抱きしめた、苦しいほどに、ギュッと抱きしめられる。 「全部だ! 全部! こうちゃんの全部は、俺が貰う! 」 必死にそう言葉にするだけで、気持ちが溢れて、涙がこぼれた。 高まりすぎた感情は、上手く、言葉になってくれない。  碧は、航平に縋り付いて、離れるまいと抱きしめた。 航平は、ゆっくりと背中に手をまわすと、そっと撫でた。 「じゃぁ、あおくん…… 一緒に、居ようか」 航平のつぶやきに、碧は顔をあげずに、何度も頷いた。  
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