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碧は、スーツ一式を持って、航平の元へ急いだ。
朝ごはんを食べ終えた航平に、歯磨きをさせて、スーツを着せた。
ぼさぼさの髪を整えて、伸びすぎた髪を一つにくくった。
碧的に、まあまあ納得の『イケメン』にしあがったが、いつもの時代遅れの眼鏡を掛けると、なんともくたびれたおじさんになった。
「今日、式が終わったら、眼鏡屋に行くから」
碧は、航平にそう宣言した。
「碧君、ウチの大学に通うのか? 」
「そうだよ、こうちゃんと同じ理学部・地球環境学科だよ、水無助教授」
碧の言葉に、航平は満足そうに笑った。
「碧君は、もう俺の事なんて忘れちゃったかと思っていたよ」
「そんなわけないでしょ。
そうだ! こうちゃん、鍵開いてたよ、不用心だなぁ」
「あぁ? そうだったか?」
「そうだよ、気を付けて」
碧は、航平に、ぷりぷり怒りながら、自分のリュックを背負って、立ちあがった。
「じゃぁ、俺行くよ」
「どこに? 」
航平は、訳が分からなくて、食べてい卵焼きを、落としそうになった。
「大学だよ、入学式から『遅刻』なんて嫌だからね」
「一緒にいけばいいだろ」
航平は、機動力で選んだ小さな軽自動車に乗っていて、大学まではこれで通っている。
「ううん、大丈夫、バスあるから、時間も調べてあるし」
「一緒の場所に行くし…… 」
「いいんだ、始めからこうちゃんに、甘えられないよ、じゃあ、後でね」
「おう」
忙しそうに家を出て行こうとして、碧が振り返った。
「こうちゃん、俺の事、すぐに分かった? 」
「ん? わかったよ…… 大きくなったな」
碧は嬉しそうにフフフと笑った。
「うん、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
六年ぶりにそう言って、航平をチラリと見て、碧は家を出た。
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