ハレの日のお菓子を、一緒に食べた日

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「え? ユゲシ―引っ越したの? 」 学校で、引っ越しの事を広瀬健斗に話すと、不思議そうに首を傾げられた。 「うん、そう、知り合いの家に、下宿させてもらえることになって、下宿代が安く済む分、アルバイトも減らせるよ」 「それはよかったな、でも、もう、ユゲシ―のアパートに行けないのは寂しいなぁ」 もう一人の友人 長倉芳邦もそんな風に言った。 「それなぁ」 健斗が、全く同感だと言いたげに頷いた。 「でも、俺も、アパート探そうかと思っているんだよ、やっぱり、家から通うのは少し遠くて、不便だからなぁ、今、親を説得中」 長倉のその言葉に、健斗が目をキラキラさせた。 「いいなぁ、俺も、そうしようかなぁ」 「生活するのは金かかるから、家に居られるのなら、その方がいいと思うけどね」 碧の言葉に、健斗は得意そうに 「ユゲシ―、何事も経験だよ、今のうちにできる経験は、今のうちにしておかないとなぁ」 と、言って胸を張った。  健斗の言葉に、長倉はいいことを聞いたぞというように、乗り出した。 「じゃァさ、夏休み、海の家でアルバイトしない? 八月のお盆前の二週間程度何だけど、住み込みで、仕事はきついけど、温泉付き」 「海の家? 」 「そう、親戚が海の家やってて、俺はアルバイトに行く予定なんだけど、一緒にどう?」 「海の家! 俺やる! 夏って感じ! 海も満喫できそうだし、お金ももらえるなんて最高ジャン」 健斗が食い気味に、拳を作って力説する。 「……海の満喫は、責任取れないけどな」 長倉は、少し、肩をすくめながら言った 「ちょっと考えてもイイか? 」 碧は、申し訳なさそうに、長倉に聞いた。 「ああ、ユゲシ―は、今のバイトの関係もあるだろ、よく考えてくれ」 長倉はそう言って、了解してくれた。  航平の家に、引っ越してから、アルバイトは減らしていた。 引っ越し屋のバイトは、今まで通りだが、航平が嫌がるので、居酒屋のバイトはやめることにした。 次の人が決まるまでは、今まで通りバイトをすることになっている。    居酒屋を辞めると、学費の支払いは、心もとない。 長倉が誘ってくれた、短期間で実入りの良いバイトはありがたい。  学費とは別に、碧には買いたいものがあった。 それはベッドだ、航平と二人で眠れる広めのベッドが欲しい。  航平が、恋人になってくれたので、今までより本腰を入れて、男同士で、どうやって愛し合うかを、調べた。 さすが情報社会、小さな、手のひらサイズの機器なのに、色々な事が分かった。  体を重ねる方法や、楽な態勢のアドバイス、準備、必要な品々はもちろんだが、布団では、膝や腰が痛くなるという書き込みを見つけた。 無理な体制をとることは必然で、より快適なラブライフを送るためには、必要不可欠なモノのように感じた。 碧の部屋の入る物を選ばなければ……  航平は、碧の部屋に、その意志を持ってきてくれるだろうか…… 航平には、内緒で準備したいが、航平の意見も聞いて方がいいだろう…… だって、家主だし。  カッコイイ、大人の男には程遠いなぁと思うと、ため息が出た。 とりあえず、話してみよう……  夏のアルバイトと、ベッドについて。 碧は、早速、その日の夕飯の時に、航平に聞いてみることにした。
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