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「泊まっていく?」
香月の腕枕で少しうとうとしていたら優しい声音で聞かれた。そうしたいのが本心だけれど明日も学校だ。
「ううん。帰る」
「そっか」
寂しそうな声に胸がせつなく疼き、額にキスをあげるとふわりと微笑まれた。
香月のことをよくわからないと思っていたけれど、それは優歩が香月を見ていなかったからだった。近づけばとてもわかりやすい男だ。優歩がすることに一喜一憂して、笑ったりむくれたり拗ねたりする。どんな香月も可愛いと思う。
「ねえ香月」
「なに?」
「……明日も遊びに来ていい?」
恥ずかしいから香月の首元に顔をうずめて聞くと、髪を梳くように撫でられた。
「俺がだめって言うと思う?」
「思わない」
「でしょ?」
額を合わせて笑い合い、唇を重ねる。
もっと知りたい。香月のすべて。香月が教えてくれてもいいけれど、自分で見つけていくのも楽しい。香月なら、すべてを大切にできる。
「ごめん、優歩」
「なにが?」
「なんか……がっついちゃったから」
恥ずかしそうに頬を染める香月に口元が緩む。それだけ優歩を求めてくれたのだから、嬉しいに決まっている。
「渚沙に報告しないとね」
「そうだな」
「きっと喜んでくれる」
「かなあ? 俺、怒られたらどうしよう。『優歩に不純な真似するな』って」
渚沙の真似がうまくてつい笑ってしまう。香月は本当に心配そうにしているから、そっと頭を撫でてあげた。
「渚沙は怒らないよ。だって俺達の幸せを一番喜んでくれるんだから」
「そっか……そうだよな」
明日は早めに学校に行って渚沙を待っていよう。たぶんそれだけでなにかがあったと察するだろうけれど、きちんと報告したら絶対驚く。
「香月、大好き」
「俺はそれ以上に好き」
抱きしめ合って脚を絡める。優しい温もりに包まれてそっと目を閉じると唇が重なった。
終
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