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* * *
次の日の朝。
ようやく顔を合わせたエルマは、やっぱり不機嫌だった。
だよな、しょうがない。
けど、俺もしょうがなかった。
うん。
「私からも、一つ頼みがある」
前置きもない辺りがエルマのサバサバさだ。
「何?」
「ヨシュアの前では態度にも口にも出さないでほしい。仕事に支障をきたすのは迷惑」
「わかってる。その辺はさすがに理解してるし、上手くやるつもり。俺だって、今の関係は気に入ってるし、ダサいことをするつもりはないから」
さらりと答えてるけど、すごくホッとした。
俺の気持ち自体は迷惑だって言われなかったし、告白のお断りでもなかった。
よく知るエルマらしさに安心を覚えるけども、逆にちょっと心配にもなる。
だって、俺みたいな告白だったり、友達としてって近づかれたら、他の野郎でも受け入れてちゃう可能性があるってことだろ。
これまでは男前としか見てなかったけど、見る目が変わるとつけ込まれる隙があるようで心配になる。
あー、こんなこと考えるなんて、俺、本当にエルマが好きになったんだな。
自分の気持ちだし、告白もしてるんだけど、まだちょっと慣れなくて不思議。
なんでかエルマは、頼みを了承したのに不機嫌さに疑いを混ぜ込んだ顔で見てくるし。
ま、早々に許されることはないよな。
長期戦……は辛いから、中期戦くらいで受け入れてくれるとありがたいんだけど。
「よっしゃ。船下りたら、真っ先にヨシュアのとこに行くか。ミカル兄がこういう手配をしたってことは、それなりの境遇にいるってことだろうし」
「言われるまでもない」
むっすりしているエルマは、それでも返事をしてくれる。
やっぱ、いいな。
でも、ヨシュア離れするつもりもないから切り替えて頑張りますか。
「三人揃えば、俺達は無敵だ」
「そんなの、アベルより知ってるから」
つんとしたエルマの返しに俺は腹の底から笑った。
俺とエルマとヨシュア。
それはもう、これからもずっともっと完璧になる三人組だ。
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