最後の前に。

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「申せ!何が起きたのだ!?」  其れを確認した直後、険しい表情で幼い少女の形となった鳥の肩を掴んでの一声。怯えて涙を浮かばせながらも、何者が自身に問うているかを漸く理解した、鳥の娘。慌てて改まり、厳かに拝をして。 「し、神使様……!と、とんだ御無礼を、お許し下さいませ……!」  怯え、額を打ち付けた幼い其の形へ、ジンも我に返った。焦りから手荒であったと、其の身を優しく起こしてやる。 「良い。突然済まなかった……何があったか、教えてくれ」  一呼吸置き、冷静に今一度問うジンへ、娘は涙目で口を開く。 「や、山のてっぺんが……突然、強く光って……その後、山が揺れて、凄い揺れで……父さんも母さんも、何処にも、いなくて……っ」  そう語った声。俯き、言葉を紡ぐのが最早困難な少女の頭を、ジンが優しく撫でてやった。すると、その身は白い翼を持つ鳥の姿へと戻された。其の鳥を掌へ抱いて、優しく羽を撫でながら。 「助かった。礼を言う……此処から東へ真っ直ぐ飛ぶのだ。やがて、大きな木が見えてこよう。汝の両親は、其処で待っておる」  ジンがそう語りかけ、手に留まる鳥の頭へ優しく口付けると、鳥は真っ直ぐ東を目指し飛び立って行く。其れを見送って、ジンは山の山頂を険しい表情で眺めた。 「この気の流れ……山のものではない……龍の力だ……しかし、何故……っ」  ジンは再び空を舞い、急ぎ山頂へ向かう。狂った様に逃げ惑う鳥、獣達とは真逆の方角へと。一体何が起こったというのか、強い気の流れに山全体が怯え、震えているのだから。  軈て。辿り着いた山頂。其処で目にした光景へ、ジンは驚愕のあまり目を見張る。其れだけでは無い、一瞬声すら忘れてしまった程で。 「イン……」  佇む者の背へ向けて、漸く出たのは絞り出した様な声。 「少し、早かった様だな……しくじったわ」
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