乞う魂。

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 マオとは、リンと共に黒龍に仕える大蛇であり、美しい翡翠色の身を持つ。其のマオの人となった面差しは、何と同じく人の形となった白龍と瓜二つ。リンにとって、最も信頼を置く友でもある。  暫し言葉も無く、横たわるジンとインを見詰めて居たが、待ち望んだ一瞬。突如、部屋の扉が大きく開かれたのだ。其れは事態への緊迫感が伝わるが如く、荒々しくもあった。 「――黒龍様とマオ様がお戻りになられました!」  扉を開いた官吏の声。其れにもやはり、動揺を隠しきれず。数名の官吏が、開いた大きな扉の両側へ並び、拝揖した。  其の間を縫い、部屋へと入って来たのは漆黒の体をくねらせる龍の姿。広く天も見えぬ部屋の中で、其の漆黒の龍はリンと女官の前にて身を静止させた。そして、低い唸りを上げる。 「お帰りなさいませ」  リンが其の御前へ立ち、拝する。女官は恐れ多い其の御姿を前に地へ頭を付けて拝した後、扉を開けた者達と共に、席を外す為に部屋を出て行ったのだった。  他の気配が消えると、黒龍はリンを見据え、其の神々しい姿から、女性と見紛うばかりの美麗な青年の姿へと身を変える。と、此処で黒龍の背後へ控えていたマオの姿も見えた。 「死んじゃいねぇだろうな」  言葉を得た姿にて、開口一番の黒龍の声。其の姿に大凡似つかわしくない物言いでリンへ訊ねる。更に此れ又、甘く美しい声なのだから。  リンは主の問いへ、言葉を迷うが。 「は。白龍様の御加護の力が、回復を見せぬ事だけは確かで……此の私も、事態が飲み込めず」  素直に其のままを告げたリン。此れに。 「な、龍の加護が……?」  控えていたマオが、二人の容態を耳にし思わず声を上げた。其れは真なのかと、動揺を見せるマオへ、リンも無言で頷くしか出来ない。  報告に眉を寄せた黒龍は、床へと横たわる二匹へ歩み寄ると、ジンとインの額に掌を翳した。暫く続いた静寂の後、黒龍は溜め息を漏らす。
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