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暗い暗い竹が生い茂る山に、淋しく小さな沼がある。其処に棲むのは、天に仕える龍と、可愛い可愛い御使いの蛇二匹。
――そんな淋しい処に天の龍などおわすものか。龍が棲むのは、もっともっと広い海の中、そうでないのなら、天に近い霊山だ――。
何時しか其れは、危険な沼に幼子が近寄らぬようにと、大人が警告するありふれた昔話となっていった。
数多ある世界のひとつ。此の世界での龍とは、世を造り上げた天帝より地を統べる任を担う五匹の龍神で五龍と呼ばれる。
春を司り、風を起こし、緑育む種を運ぶ青龍は、東を守護する。夏を司り、炎により恵みと罰を与える赤龍は南を守護する。秋を司り、金を育み、雷雲を呼ぶ白龍は西を守護する。冬を司り、水を守る黒龍は北を守護する。そして、天と対をなす地を任された龍達の長、黄龍は全ての龍の力を支え、繋ぐ地の力を持ち、正に其の地の中心を守護する役を担っている。
命が増え、多忙を極める様になった五龍達は其々、地の生ける者より大蛇を二名、自身の使いとして側に置く事を天帝より認められた。全ての生ける者達の中でも、強い精気を持ち、不老長寿である大蛇は特別な種族。其の中でも更に強い力を持つ大蛇こそが、龍の使いとなれるのだ。神格迄は与えられない為、不死にはしてやれないが、龍に仕える力を持つ間は、龍の加護が与えられる限り悠久を生きる事と定められた。
此れは其の五龍の内、白龍に仕える金色の蛇と銀色の蛇の絆の物語。
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