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「あいつ、何かムカつかねえ?」
三ヶ月前に退職した井上店長の後任として入ってきた尾崎の後ろ姿を睨み付けながら倫平が言った。
「尾崎さんに何か言われた?」
尾崎と倫平を交互に見ながら乃亜は尋ねた。
「あいつ、偉そうにでかい口ばっか叩きやがってさ。『そこ邪魔だ』とか『無駄口叩くな』とか『さっさと客のとこ行けよ』とか指図までしてきやがんの」
「えー、それはちょっと酷いね。倫平、尾崎さんに何かしたんじゃないの?」
「してねえよ」
「尾崎さん、いつも仕事は完璧にこなすし指示は的確だし、店長としてはいいんじゃないかなって私は思ってたんだけど……」
そんなことよりも今は――
「ねえ、久しぶりだよね」
機嫌を直してもらおうと、乃亜は努めて明るく笑顔で言った。
「え?」
「倫平とシフト被るの」
「ああ……おう、そうだな」
仕事中ではあったけれど、二週間ぶりの倫平との時間を有意義に過ごしたいと思ってしまうのは間違っていたのだろうか。
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