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視線を戻すと、隣に座った客が笑いをこぼしているのが見えた。向こうからは、稚拙なマジシャンの手の内が見えているようだ。
「さあ、暗くて見えないが、これはコーラだ!」
彼は蓋の開いた瓶を渡し、ブロンドの隙間からウィンクをした。長い睫毛の生えた青い目だった。
その奥の客も、中身が半分ほどになったグラスを持ち上げ、店内にいる他の客も、成り行きを見守るように視線を向けてきている。
ウェルを見ると、自分の知る所ではないと言いたげに下唇を突き出し、肩をすくめた。
途端に、クラウスはこの場に受け入れられた気分になった。
「ありがとう!」
「いいさ。天国のママに乾杯だ」
受け取って礼を言うと、客は歯を見せて笑った。
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