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姉妹の日々
私たち姉妹は、学校からの帰り道に、見知った村民の畑に入り、そのとき食べ頃の果実を盗んでは食べていた。
瞭然、いけないことだと分かっていたが、畑の主である気の好い村民は、いつでも二つずつ果実を捥がずにいてくれて、どうやら形が悪く、売り物にならないものが残されているようだった。
「食べてしまえば形なんか関係ないわ」
私がかつて一度だけ言ったこの言葉を、花枝は何度も繰り返し、念を押すように言い続けた。そして果実を食べるたび、幸せそうな笑みを向けてくれた。
「ほら、もう口の中で形が変わっちゃったよ」
そうして二人できゃらきゃらと笑い、最後まで食べた後は、それを育ててくれた村民の家へ挨拶に行った。すると村民は、わざと怒って見せ、私たちに小一時間ほどの説教を始める。彼は話し相手が欲しかったようで、説教が始まって毎回二分とかからず、話は愚痴となり、そこから冗談に発展し、結びには漬物をいただいてお開きとなる日々となっていた。
きつい煙草が好きな彼の作る漬物は美味しいのだけれど、私たちにはやや辛く、花枝は犬のように舌を乾かしながら、決まってこう言った。
「甘い飲み物がほしいよ。隣村には自動販売機ってものがあるらしいね。うちの村にも、自動販売機が来たらいいのに。お金を入れたらジュースが出てくるんだって。村長さんにお願いしてみようよ。そうしたら、きっとこの村も都会になるよ」
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